ドンチャンチャネル:一定期間の高値・安値の更新で順張りする
- 20日高値ブレイクで買い・10日安値割れで売りは、19年で年率3.9%・最大下落率−27.4%・PF1.66。ただし取引は19年で85回と少なめ
- 20日高値を上抜けた日の20営業日後の平均は+0.48%で、すべての日の+0.75%を下回った。成績を支えたのは入口ではなく「損を小さく切る出口」
- 期間を27通り変えると25通りが年率プラス。ただし買い持ちの年率7.3%を超えた組み合わせは1つもない
ドンチャンチャネルは「直近の最高値と最安値」の帯
ドンチャンチャネルは、直近N日の高値のうち最も高い値(上側)と、直近M日の安値のうち最も安い値(下側)を線で結んだ帯です。移動平均のような平均の計算はなく、「この期間で一番高い・一番安い」だけを見ます。
本記事では、上側・下側とも当日を含まない直前の期間で計算します。当日を含めると、その日の高値が上側そのものになり、終値が上側を超えることがほぼなくなるためです。
下側 = 直前10日の安値の最安値
買い:終値 > 上側 売り:終値 < 下側
上側と下側で期間を変える理由
買いに20日、売りに10日と期間を変えているのがこのルールの特徴です。上側の期間が長いほど「本物の上抜け」だけを拾い、下側の期間が短いほど早く手じまいます。買うときは慎重に、降りるときは素早く、という非対称な設計です。もっと長い版として、55日高値で買い・20日安値で売る組み合わせも知られています。
約19年分の日経平均で数えると、終値が20日高値を上抜けた日は499日(全体の10.5%)。このうち前日は上抜けていなかった「初日」は298日でした。55日高値の上抜けは332日、#016で扱った52週高値(終値)の更新は286日です。期間が長くなるほど、ブレイクは少なくなります。
「高値を更新した=これから上がる勢いがある」とは限りません。後で見るとおり、日経平均では20日高値を上抜けた日のその後のリターンは、平均的な日より低めでした。ブレイクアウト売買は「当たる買い方」ではなく、「負けを小さく、勝ちを大きく」する仕組みとして考える方が実態に近いです。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日で、このルールは13回売買しました。2024年12月は12月12日に買って19日に売り、27日に買い直して2025年1月14日(38,474円)に売るという、短い往復が続いています。上抜けてもすぐに下側を割る「だまし」の典型です。
2025年4月の急落の間は、1月14日に売ったあと現金のままでした。4月7日の終値31,136円を見送り、次に買ったのは5月1日(36,452円)。1月の売値より安く買い戻せたことになります。この取引は11月18日(48,703円)まで続き、+33.41%と19年間で最大の勝ちになりました。2026年も4月8日(56,308円)に買い、7月8日(66,819円)に売って+18.47%です。
2024年8月5日の急落では、7月18日(40,126円)にすでに売っていました。8月5日の終値31,458円は、そこから−21.6%です。2026年10月1日に再び買いが出て、10月2日は終値68,309円、20日高値68,995円、10日安値63,067円で保有中です。チャネル幅は19年間の平均で終値の7.2%(中央値5.9%)でした。
検証①:20日高値で買い、10日安値割れで売り
ルール:終値が直前20日の高値の最高値を上回ったら買い、直前10日の安値の最安値を下回ったら売る(買いのみ)。期間を±20%ずらした16/8と24/12、長い版の55/20、高値・安値の代わりに終値だけでチャネルを作る版、200日線の上でだけ買う版、買値からATR(#008)の2倍下がったら損切りを足す版も試しました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| ドンチャン 20/10 | 2.10倍 | 3.9% | −27.4% | 85 | 47% | 1.66 | 44% |
| ドンチャン 16/8(−20%) | 2.02倍 | 3.7% | −31.5% | 101 | 50% | 1.54 | 43% |
| ドンチャン 24/12(+20%) | 1.51倍 | 2.1% | −43.7% | 78 | 37% | 1.39 | 43% |
| ドンチャン 55/20 | 1.81倍 | 3.1% | −28.6% | 39 | 41% | 1.81 | 40% |
| 終値チャネル 20/10 | 1.98倍 | 3.6% | −25.9% | 110 | 47% | 1.47 | 44% |
| 20/10+200日線の上だけ | 1.93倍 | 3.4% | −25.4% | 72 | 43% | 1.73 | 37% |
| 20/10+ATR×2損切り | 2.11倍 | 3.9% | −26.1% | 87 | 45% | 1.67 | 43% |
20/10は平均24.6日保有し、資産は2.10倍、年率3.9%でした。最大下落率−27.4%は買い持ち(−61.4%)の半分以下です。55/20は取引が39回と少なく、年率3.1%。PFは1.81と高いものの、前半(〜2016年9月)の年率は−0.26%で、成績は後半(6.28%)に偏っています。
ATRの損切りを足しても、年率3.9%・最大下落率−26.1%とほぼ同じでした。10日安値という出口が、すでに損切りの役目を果たしているためです。200日線の上でだけ買う版は、最大下落率が−25.4%とわずかに小さくなる代わりに、取引が72回に減りました。
勝率は5割未満。勝ちの大きさで稼ぐ
20/10の勝率は47%で、半分以上の取引は負けです。それでも成績がプラスになるのは、勝ちの平均+5.98%に対して、負けの平均が−3.21%に収まっているからです。最大の負けは−7.20%(2016年4〜5月)にとどまり、最大の勝ちは+33.41%でした。85回のうち上位5回の合計は+112.27%で、勝ちトレード全体(+239.32%)の約半分を占めます。
年ごとに見ると、2013年(4回で+40.4%)や2025年(+28.7%)のような大きな上昇の年に稼ぎ、2016年(6回で−14.2%)や2024年(7回で−5.0%)のような上下に振れる年にだましで削られました。コストをゼロにすると年率は4.82%まで上がります。
入口にはむしろ「逆の力」があった
20日高値を上抜けた日に買っても、20営業日後の平均は+0.48%で、すべての日の+0.75%に届きません。売りのサインである10日安値割れの日の方が、その後+1.17%とよく上がっていました。ブレイクの瞬間そのものに、上昇を予告する力は見当たりません。このルールが買い持ちより成績で劣る一方、下落を半分以下に抑えたのは、大きな下げの途中で現金にいたことによるものです。#007 RCIと同じく、成績を決めていたのは入口より出口でした。
検証②:「20/10」は特別な数字か
上側の期間を10〜100日の9通り、下側をその1/4・1/2・同じ長さの3通りにして、27通りを総当たりしました。
| 上側の期間 | 下側=1/4 | 下側=1/2 | 下側=同じ |
|---|---|---|---|
| 10日 | −3.2% | −1.2% | 0.2% |
| 15日 | 2.4% | 3.1% | 2.6% |
| 20日 | 3.1% | 3.9% | 3.7% |
| 25日 | 3.3% | 1.9% | 3.3% |
| 30日 | 3.2% | 2.5% | 2.0% |
| 40日 | 2.7% | 3.1% | 3.2% |
| 55日 | 3.2% | 2.9% | 3.3% |
| 70日 | 2.9% | 1.6% | 4.0% |
| 100日 | 4.7% | 4.9% | 5.3% |
27通りのうち25通りで年率がプラス、中央値は3.1%でした。マイナスになったのは上側10日の短い組み合わせだけです。20/10の3.9%は上位ですが、飛び抜けてはいません。上側を長くした100日の版は年率4.7〜5.3%と高いものの、取引は13〜26回しかなく、偶然の影響を受けやすい数字です。買い持ちの年率7.3%を超えた組み合わせは、1つもありませんでした。
一方で、隣り合う組み合わせでも差は小さくありません。25/12は1.9%と、25/6・25/25(いずれも3.3%)より明らかに低く、主ルールの感度に使った24/12(2.1%)もこの谷に入っています。上側20日のまま下側を8日にすると4.2%、12日にすると3.0%でした。数字を少し変えるだけで年率が1〜2ポイント動くので、20/10の3.9%は「この組み合わせでたまたま良く出た値」を含んでいると見るべきでしょう。取引が100回以上になった6通りのうち、PFが1.3以上だったのは3通りでした。
読み解き
- 20/10は下落に強いが、取引回数は少なめ。年率3.9%・最大下落率−27.4%・PF1.66で、後半の年率6.57%は前半1.17%を大きく上回った。ただ取引は19年で85回にとどまった。
- ブレイクは「上がるサイン」ではなかった。上抜けた日の20日後リターンは+0.48%と全日平均+0.75%を下回る。成績は、10日安値で負けを平均−3.21%に抑え、大相場で+33.41%のような勝ちを伸ばす出口の仕組みから来ている。
- 期間の選び方で成績は1〜2ポイントぶれるが、方向は安定している。27通り中25通りがプラスで、上側10日の短すぎる設定以外は崩れない。ただし買い持ちを超える組み合わせはなく、長い版の55/20も年率3.1%にとどまった。順張り系の#018 ADX(年率3.1%)、#016 52週高値(3.5%・14回)と同じ水準である。
成績のまとめ(20日高値ブレイクで買い・10日安値割れで売り)
19年で取引は85回と少なめ。PF1.66・最大下落率−27.4%と中身は良く、後半の成績も前半を上回った。期間を16/8に短くすると取引は101回に増え、終値だけで作るチャネル(取引110回)も成績はおおむね同水準。ただ、これらは結果を見てから選んだ変形で、24/12では年率2.1%・最大下落率−43.7%まで悪化する。どの版も年率は買い持ち7.3%の半分前後であり、「下落を抑えた順張り」という性格の指標といえる。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
strategy("ドンチャン 20/10(買いのみ)", overlay = true, initial_capital = 1000000,
default_qty_type = strategy.percent_of_equity, default_qty_value = 100,
commission_type = strategy.commission.percent, commission_value = 0.1,
process_orders_on_close = true)
entryLen = input.int(20, "上側(買い)の期間")
exitLen = input.int(10, "下側(売り)の期間")
// 当日を含まない直前の期間で計算
up = ta.highest(high, entryLen)[1]
dn = ta.lowest(low, exitLen)[1]
plot(up, "上側", color = color.blue)
plot(dn, "下側", color = color.orange)
if close > up
strategy.entry("Long", strategy.long)
if close < dn
strategy.close("Long")

