移動平均乖離率:平均から離れすぎた反動を狙う
- 25日乖離率が−10%を下回った日は19年で53日、全体の1.1%。−15%未満は23日(0.5%)しかない
- −10%を下抜けた日(18回)の20営業日後は平均+7.50%、上昇率83.3%。全日平均+0.75%を大きく上回る
- 「−5%未満で買い、25日線に戻ったら売り」は年率2.5%・PF1.73。ただし取引は19年で45回と少なめ
乖離率は「移動平均からの距離」
移動平均乖離率(いどうへいきんかいりりつ)は、終値が移動平均線から何%離れているかを表す指標です。移動平均線を「最近の平均的な値段」とみなし、今の値段がそこからどれだけ行き過ぎているかを測ります。日本では25日移動平均(約1か月)を使うのが定番です。
プラスなら移動平均より上(上がりすぎ)、マイナスなら下(下がりすぎ)です。逆張りの考え方では、大きなマイナスは「売られすぎ」で、いずれ移動平均に向かって戻る(平均回帰)と考えます。
どれくらい離れると「珍しい」のか
まず、約19年分(4,760日)の25日乖離率がどう分布しているかを数えました。平均は+0.37%、標準偏差(ばらつきの大きさ)は3.82%です。
| 25日乖離率 | 日数 | 全体に占める割合 | 1年あたり | 下抜けた回数 |
|---|---|---|---|---|
| −3%未満 | 742 | 15.6% | 38.2日 | 166 |
| −5%未満 | 343 | 7.2% | 17.7日 | 98 |
| −7%未満 | 146 | 3.1% | 7.5日 | 49 |
| −10%未満 | 53 | 1.1% | 2.7日 | 18 |
| −15%未満 | 23 | 0.5% | 1.2日 | 7 |
| −20%未満 | 13 | 0.3% | 0.7日 | 5 |
−5%未満は1年に17.7日ほど、−10%未満は2.7日ほどです。−15%を下回ったのは、19年で23日しかありません。年ごとの最小値を見ると、2017年は−3.81%までしか下がらず、2021〜2023年も−6〜−7%台にとどまりました。−10%は「毎年来る買い場」ではありません。
最も深かったのはリーマン・ショック後の2008年10月27日で、終値7,163円、25日線10,007円、乖離率−28.42%。コロナ・ショックの2020年3月16日は−21.52%、2024年8月5日は−20.38%、2025年4月7日は−15.14%でした。東日本大震災直後の2011年3月15日も−18.07%です。
「−10%まで下がったから、ここが底」とは限りません。2008年は10月6日に−12.57%で−10%を割ったあと、10月27日の−28.42%まで離れ続けました。乖離率は「どれだけ行き過ぎたか」を示すだけで、「ここで止まる」という線ではありません。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日で−5%を下回ったのは17日です。2025年4月4日に−8.53%、4月7日(終値31,136円)に−15.14%まで離れ、4月11日には−6.70%まで戻りました。5月2日には+6.17%と、1か月足らずで25日線の上に出ています。
2026年は7月29日(61,434円)に−8.98%まで離れました。逆にプラス側では、5月7日に+10.05%と大きく上に離れています。10月2日は終値68,309円、25日線65,532円で、乖離率は+4.24%です。
検証①:下抜けた日から20営業日後
乖離率が−3%・−5%・−7%・−10%・−15%を上から下に抜けた日に終値で買ったとして、20営業日後(約1か月後)の終値までのリターンを集計しました。
どの水準も全日平均の+0.75%を上回りました。−10%下抜けは平均+7.50%で、18回中15回がプラスです。ただし、−7%が−5%より低いなど、きれいな右肩上がりではありません。件数が少ないほど、1回の結果に平均が大きく左右されます。
−15%の7回は、2008年が3回を占める
−15%を下抜けた7回のうち、2008年10月の3回は20営業日後が−6.74%、+0.05%、−11.20%でした。残る4回(2011年3月15日、2020年3月12日、2024年8月5日、2025年4月7日)はすべてプラスで、2024年8月5日は+22.98%、2025年4月7日は+18.60%です。2008年9〜12月を除くと、−15%下抜けの平均は+14.67%に跳ね上がります。大きな数字の裏側には、リーマン・ショックの3回を「外れ」として抱えた少数の事例しかありません。
検証②:売買ルールにする
ルール:25日乖離率が−5%未満になったら買い、0%以上(終値が25日線まで戻る)になったら売り。比較として、−5%を下抜けた日から20営業日持つ版、−10%で同じことをする版も試しました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| −5%未満で買い→0%で売り | 1.61倍 | 2.5% | −44.6% | 45 | 76% | 1.73 | 16% |
| −5%下抜けで買い→20日保有 | 1.98倍 | 3.6% | −46.5% | 43 | 67% | 1.96 | 25% |
| −10%未満で買い→0%で売り | 2.66倍 | 5.2% | −31.7% | 15 | 87% | 8.91 | 5% |
| −10%下抜けで買い→20日保有 | 2.56倍 | 5.0% | −34.1% | 14 | 86% | 8.68 | 7% |
−5%の主ルールは、全期間の16%しか市場にいないのに、年率2.5%を残しました。勝率76%、PF1.73。平均16.4日の保有で、1回あたりの平均は+1.25%です。−10%版は年率5.2%・最大下落率−31.7%と数字は良いものの、19年で15回しか取引がありません。
最大下落率−44.6%は、2007年8月9日から2008年10月27日までの下げで記録しました。2008年9月5日に−5%割れで買い、25日線に戻るまで待った結果、11月5日に売るまでで−22.04%。保有中に乖離率は−28.42%まで広がりました。2020年も2月27日に買い、4月7日に売って−13.66%です。「25日線に戻るまで待つ」ルールには損切りがないため、暴落の入口で買うと深い傷を負います。
出口:25日線で売るのは早すぎる
同じ−5%でも、20営業日持つ版の方が年率3.6%と高くなりました。2025年4月がよい例です。主ルールは4月3日(34,736円)に買い、4月24日(35,039円)に25日線まで戻ったところで売って+0.87%。その後の5月の上昇は取れていません。急落後の戻りは25日線で止まらず、その上まで続くことが多いようです。
閾値と期間を変えると
| 25日線、0%で売り | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| −3%未満で買い | 1.79倍 | 3.0% | −47.6% | 83 | 76% | 1.60 | 25% |
| −4%未満で買い | 1.79倍 | 3.1% | −47.9% | 60 | 80% | 1.75 | 20% |
| −5%未満で買い | 1.61倍 | 2.5% | −44.6% | 45 | 76% | 1.73 | 16% |
| −6%未満で買い | 2.11倍 | 3.9% | −40.9% | 37 | 78% | 2.47 | 12% |
| −7%未満で買い | 2.27倍 | 4.3% | −40.9% | 30 | 80% | 3.14 | 10% |
| −8%未満で買い | 1.65倍 | 2.6% | −40.9% | 23 | 74% | 2.45 | 8% |
| −10%未満で買い | 2.66倍 | 5.2% | −31.7% | 15 | 87% | 8.91 | 5% |
どの閾値でも年率はプラスで、PFは1.60以上でした。ただし−7%の4.3%から−8%の2.6%へ急に落ちるなど、閾値1%の違いで成績が大きく変わります。取引が少ないほど数回の当たり外れで結果が動くため、主ルールには、取引数がある程度確保でき、一般によく使われる−5%を選びました。移動平均の期間を20日・30日にすると、年率は2.44%・2.17%と、25日の2.50%に近い水準を保ちました。
読み解き
- 深い乖離のあとは、1か月後に戻っていることが多い。−10%下抜けの20営業日後は平均+7.50%・上昇率83.3%。−5%でも+2.46%と全日平均の3倍強。日経平均の大きな下げには平均回帰の傾向が見られた。
- ただし深いほどめったに来ず、外れると大きい。−10%未満は全体の1.1%、売買ルールにすると19年で15回。2008年10月は−10%割れのあとも−28.42%まで離れ、−5%で買った主ルールは1回で−22.04%を失った。
- 逆張り系の中では成績が安定している。主ルールのPF1.73は#004 ボリンジャーバンドの逆張り(−2σ割れ、PF1.43)を上回り、期間を20日・30日に変えても年率2%台を保った。一方で年率2.5%は買い持ち7.3%の3分の1ほどで、保有率16%のぶん取り逃がしも大きい。
成績のまとめ(25日乖離−5%未満で買い→0%で売り)
取引は19年で45回、1年あたり2〜3回では、偶然を十分に排除できない。PF1.73、後半(2016年10月〜)の年率3.59%は前半1.35%を上回り、20日線・30日線でもプラスを保った。−10%版は年率5.2%・PF8.91と見栄えは良いが、取引15回に加え、後半3.45%が前半7.02%の半分に届かない。「深い乖離で買う」発想そのものは検証①の数字で支持されるが、損切りのない逆張りである点、2008年のような下げに弱い点には注意が必要だ。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("移動平均乖離率", overlay = false)
len = input.int(25, "移動平均の期間")
th = input.float(-5.0, "買いの乖離率(%)")
ma = ta.sma(close, len)
dev = (close / ma - 1) * 100 // 乖離率(%)
var bool holding = false
if not holding and dev < th
holding := true // −5%未満で買い
else if holding and dev >= 0
holding := false // 25日線に戻ったら売り
plot(dev, "乖離率(%)", color = color.blue)
hline(0, "0%", color = color.gray)
hline(-5, "−5%", color = color.green)
hline(-10, "−10%", color = color.orange)
bgcolor(holding ? color.new(color.blue, 85) : na, title = "保有中")

