一目均衡表:雲と線の位置で相場の強弱を一目で判断する
- 三役好転が成立した日から20営業日後の平均リターンは+0.37%。全日平均+0.75%を下回り、三役逆転の日(+1.58%)の方がその後よく上がった
- 「三役好転で買い・三役逆転で売り」は年率4.1%・最大下落率−34.8%・PF1.85。ただし19年で取引は44回と少なめ
- 単独の「転換線>基準線の間だけ保有」は年率3.3%・取引111回・PF1.44
一目均衡表は「5本の線」と「2つのずらし」
一目均衡表(いちもくきんこうひょう)は、日本で生まれたトレンド系の指標です。移動平均線のように「終値の平均」を使うのではなく、一定期間の高値と安値のまん中を使うのが特徴です。標準の期間は9日・26日・52日で、次の5本の線を引きます。
基準線 =(26日間の最高値 + 26日間の最安値)÷ 2
先行スパンA =(転換線 + 基準線)÷ 2 … 26日先に描く
先行スパンB =(52日間の最高値 + 52日間の最安値)÷ 2 … 26日先に描く
遅行スパン = 今日の終値 … 26日前に描く
先行スパンAとBに挟まれた帯が「雲」です。ややこしいのは、線を前後にずらして描くことです。先行スパンは今日計算した値を26日先に置きます。逆にいえば、今日の位置に見えている雲は、26日前に計算し終わった値です。遅行スパンは今日の終値を26日前に置くので、「今日の終値と26日前の終値のどちらが高いか」が見た目で分かります。
三役好転・三役逆転とは
一目均衡表の代表的な買いの目安が「三役好転」です。次の3つがそろった状態をいいます。
- 転換線が基準線より上(短期の中心が中期の中心より上)
- 終値が雲の上限より上
- 遅行スパンが26日前の終値より上(今日の終値>26日前の終値)
3つとも反対になった状態が「三役逆転」です。2007年4月〜2026年10月の日経平均では、三役好転の状態だった日が全体の43.7%、三役逆転が23.8%、どちらでもない日が32.4%でした。三役好転が新たに成立したのは152回、三役逆転は103回です。
「雲は未来を予測している」と説明されることがありますが、雲が26日先に描かれるのは、過去の値をずらしているだけです。今日の雲の位置は、26日前の時点ですでに決まっています。先にあるのは「線の置き場所」で、未来の情報ではありません。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日で、三役好転は15回成立し、三役逆転は10回成立しました。三役好転で買い・三役逆転で売るルールの保有率は78%です。上昇相場が続いたため、ほとんどの期間を持ち続けていたことになります。
2025年4月の急落を見てみます。4月4日(終値33,780円)は三役逆転の状態で、雲の上限は39,070円と、終値のはるか上にありました。4月7日(終値31,136円)の後、相場は戻り始めますが、三役好転がそろったのは5月13日(38,183円)です。雲がまだ高い位置に残っていたため、終値が雲を抜けるまで時間がかかりました。三役好転→三役逆転のルールは2025年2月7日(38,787円)に売っていたので、急落は避けられましたが、買い戻した値段もほぼ同じ水準です。一方、転換線>基準線だけを見るルールは4月25日(35,706円)に買い戻していました。
2026年10月2日は、終値68,309円・転換線66,410円・基準線65,861円。雲は先行スパンA 66,200円・B 66,640円で、終値は雲の上です。26日前の終値65,528円も上回り、三役好転の状態です。9月30日(66,754円)に買いのサインが出ていました。なお、この日に計算した先行スパンはA 66,135円・B 65,029円で、これが26営業日後の雲になります。
検証①:三役好転は「よく上がる日」なのか
まず、売買ルールにする前に、サインが出た日のその後を数えました。三役好転・三役逆転が新たに成立した日の終値から、20営業日後までの平均リターンです。
三役好転が成立した日に買っても、20日後の平均は+0.37%で、適当な日に買った場合の+0.75%に届きません。上がっていた割合も49.7%と、ほぼ五分五分です。三役好転は、少なくとも「その後1か月の上昇」を示すサインではありませんでした。3つの条件がそろうころには、相場はすでにかなり上がっていて、短期的には一服しやすいためと考えられます。60日後まで延ばすと、好転+2.56%・逆転+2.61%(全日平均+2.24%)で、差はほとんどなくなります。
検証②:三役好転で買い・三役逆転で売り
ルール:三役好転が成立したら買い、三役逆転が成立したら売り。間の「どちらでもない」期間は、それまでの状態を続けます。比べるのは、条件を1つだけ使った版(雲抜け、転換線>基準線、遅行スパン)と、「三役好転の間だけ保有し、どれか1つでも崩れたら売る」版です。雲抜けは、終値が雲の上限を上抜けたら買い、下限を割ったら売るルールにしました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| 三役好転→三役逆転 | 2.16倍 | 4.1% | −34.8% | 44 | 34% | 1.85 | 62% |
| 三役好転の間だけ保有 | 1.30倍 | 1.4% | −44.0% | 152 | 25% | 1.23 | 44% |
| 雲抜け→雲割れ | 1.64倍 | 2.6% | −41.6% | 66 | 26% | 1.48 | 63% |
| 終値が雲の上の間保有 | 1.23倍 | 1.1% | −46.4% | 137 | 20% | 1.21 | 56% |
| 転換線>基準線の間保有 | 1.87倍 | 3.3% | −37.7% | 111 | 40% | 1.44 | 59% |
| 遅行スパン>26日前終値の間保有 | 1.23倍 | 1.1% | −38.0% | 216 | 28% | 1.17 | 58% |
年率は三役好転→三役逆転の4.1%がいちばん高く、最大下落率も−34.8%と、買い持ちの−61.4%を大きく下回りました。PFも1.85です。一方、同じ3条件でも「どれか崩れたらすぐ売る」版は年率1.4%・PF1.23まで落ちます。違いを生んだのは「買う条件」ではなく「売る条件」でした。
強さの正体は「降りるのが遅いこと」
三役逆転は、三役好転よりずっと起きにくい状態です(全体の23.8%)。そのため一度買うと、平均67.3日持ち続けます。「どれか崩れたら売る」版の平均13.7日の約5倍です。検証①で見たとおり、三役逆転が成立した日でさえ、その後は平均より上がっていました。条件が1つ崩れた程度では売らずに持ち続けたことが、成績を押し上げたと考えられます。
その代わり、成績は少数の大きな勝ちに頼っています。44回の取引のうち勝ちは15回、負けは29回。最大の勝ちは+39.61%、最大の負けは−10.56%です。上位5回の勝ちの合計は+148.28%で、全取引の合計+101.81%を上回ります。5回の大相場を除くと、残りの39回は合計でマイナスということです。
大きな下落の回避には有効でした。2007年7月〜2009年3月(リーマン・ショックを含む)は、買い持ちが−55.31%のところ、三役好転→逆転は−19.22%。2020年1〜4月(コロナ・ショック)の最大下落率は、買い持ち−31.3%に対して−6.2%でした。ただし、2024年7〜8月(8月5日の急落を含む)は買い持ち−2.48%に対して−4.54%でした。7月25日(37,869円)に売って急落そのものは避けたものの、買い戻しは9月12日(36,833円)で、その間の戻りを取り逃がしています。
移動平均線と比べると
同じトレンド系の#001 移動平均線の50日×200日クロスは、同じ期間で年率6.5%・最大下落率−36.7%・取引15回でした。三役好転→逆転は年率で劣り、下落率はほぼ同じです。どちらも「ゆっくり乗って、ゆっくり降りる」タイプで、19年で取引回数が少ない点も共通しています。
読み解き
- 三役好転は、買いの「タイミング」としては弱い。成立した日の20日後リターンは+0.37%で、全日平均+0.75%を下回り、三役逆転の日(+1.58%)より悪かった。3つそろうころには上昇の初動は終わっている。
- 成績を決めたのは、三役逆転まで待つ遅い出口。三役好転→逆転は年率4.1%・PF1.85・最大下落率−34.8%。同じ3条件でも「1つ崩れたら売る」と年率1.4%に落ちる。平均67.3日の保有で、少数の大相場を取りきった。
- 3つ重ねても、1つより良いとは限らない。転換線>基準線だけで売買すると年率3.3%・取引111回・PF1.44で、取引回数も十分にある。条件を重ねるほど取引は減り、偶然を排除するのに十分な回数を割り込む。
成績のまとめ(三役好転で買い・三役逆転で売り)
取引回数だけが不足した。PF1.85、最大下落率−34.8%、期間を×0.8(7・21・42日)と×1.2(11・31・62日)に変えても年率3.6〜4.3%と安定している。ただし19年で44回、そのうえ上位5回の勝ちが利益のすべてを生んでおり、偶然を否定できるだけの回数がない。前半(〜2016年9月)の年率0.4%に対し後半7.5%と、成績が後半の上昇相場に偏っている点も割り引いて見る必要がある。比較した「転換線>基準線の間保有」は取引111回・PF1.44と安定していたが、年率3.3%は買い持ち7.3%の半分以下で、感度も1.0〜1.6%と低い。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("一目均衡表 三役好転・三役逆転", overlay = true)
mid(len) => (ta.highest(high, len) + ta.lowest(low, len)) / 2
tenkan = mid(9)
kijun = mid(26)
spanA = (tenkan + kijun) / 2
spanB = mid(52)
// 今日の雲 = 26本前に計算した先行スパン(この検証と同じ定義)
cloudA = spanA[26]
cloudB = spanB[26]
cloudTop = math.max(cloudA, cloudB)
cloudBot = math.min(cloudA, cloudB)
koten = tenkan > kijun and close > cloudTop and close > close[26]
gyakuten = tenkan < kijun and close < cloudBot and close < close[26]
var bool holding = false
buy = koten and not holding
sell = gyakuten and holding
if buy
holding := true
if sell
holding := false
plot(tenkan, "転換線", color = color.blue)
plot(kijun, "基準線", color = color.orange)
pA = plot(cloudA, "雲(先行A)", color = color.teal)
pB = plot(cloudB, "雲(先行B)", color = color.maroon)
fill(pA, pB, color = cloudA > cloudB ? color.new(color.teal, 85) : color.new(color.maroon, 85))
plotshape(buy, "三役好転で買い", shape.triangleup, location.belowbar, color.green, size = size.small)
plotshape(sell, "三役逆転で売り", shape.triangledown, location.abovebar, color.red, size = size.small)

