NT倍率:日経平均とTOPIXの比から相場の主役を読む
- NT倍率は2007年4月の10.18倍から2026年10月2日の16.70倍へ上がり続けた。最高は2026年6月25日の18.02倍
- NT倍率が過去1年の下位10%にある日は、60営業日後の日経平均が平均+4.98%(全日平均+2.24%)。上位10%の日は+1.39%で、急落の前触れにはならなかった
- 事前に決めた「NT倍率が50日線より上の間だけ保有」は年率−2.96%・最大下落率−70.7%で買い持ちに大きく劣った。結果を見てから向きを反転した版は年率5.94%だったが、売買を1日遅らせると年率1.49%に落ちる
NT倍率は「日経平均 ÷ TOPIX」
NT倍率のNは日経平均(日経225)、TはTOPIX(東証株価指数)です。どちらも日本株全体を表す指数ですが、計算の仕方がまったく違います。
日経平均は、225銘柄の株価を足し合わせ、株式分割などを調整する「除数」で割る株価平均型です。株価の水準が高い「値がさ株」ほど、指数を大きく動かします。TOPIXは、東証の幅広い銘柄を時価総額(株価×株数)で重みづけします。会社の規模が大きいほど影響が大きく、株価の水準そのものは関係ありません。
2026年10月2日は日経平均68,309円、TOPIX4,091.00で、NT倍率は16.70倍でした。なお、ここで使うTOPIXも日経平均も、配当を含まない価格指数です。
19年で10倍から17倍へ。「高い・低い」の基準が動き続けた
検証開始の2007年4月13日は10.18倍。最低はリーマン・ショック後の2008年10月24日の9.49倍で、この日は日経平均が−9.60%、TOPIXが−7.52%と、日経平均の方が大きく下げました。その後は年末値で2012年12.09倍、2020年15.21倍、2025年14.77倍と上がり、2026年6月25日に18.02倍の最高を付けました。この日は日経平均+4.61%に対し、TOPIXは+1.33%でした。
同じ期間の値上がりは、日経平均が3.93倍、TOPIXが2.40倍です。日経平均の方がずっと強かったぶん、NT倍率が上がりました。
「NT倍率が過去最高=日経平均が割高で、いずれ下がる」とは言えません。NT倍率は19年間ほぼ一方向に上がってきたので、過去の平均と比べると、いつも「高すぎる」ことになります。そこで今回は、絶対的な水準ではなく過去1年の中での順位で高い・低いを判断しました。それでも上昇トレンドのため、上位10%にある日が全体の29.7%、下位10%にある日は7.9%と偏っています。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日で、NT倍率は13.38倍(2025年4月1日)から18.02倍(2026年6月25日)まで動きました。2025年4月7日(終値31,136円)のNT倍率は13.60倍で、過去1年の下位5%の位置です。直近500営業日のうち、下位10%にあった日は48日、上位10%にあった日は106日でした。
2024年8月5日の急落では、日経平均が−12.40%、TOPIXが−12.23%とほぼ同じだけ下げ、NT倍率は14.12倍でした。急落の日に、必ずNT倍率が大きく動くわけではありません。
2026年10月2日のNT倍率は16.70倍、50日線は16.09倍、過去1年の順位は87%です。NT倍率は9月29日に50日線を上抜けました。直近500営業日で、NT倍率が50日線をまたいだのは35回です。
検証①:NT倍率の高低と、その後の日経平均
NT倍率が過去1年(245営業日)の上位10%にある日と、下位10%にある日に分けて、その日の終値から20営業日後・60営業日後の日経平均の騰落率を平均しました。
NT倍率が上位10%にあっても、60日後の日経平均は平均+1.39%とプラスでした。全日平均よりやや低いだけで、「NT倍率が高い=この先下がる」という結果ではありません。上位10%の日の後、NT倍率自体の60日間の変化は平均−0.02%で、高い水準がそのまま続く傾向でした。
一方、下位10%の日の60日後は+4.98%と全日の2倍以上です。下げの大きかった2008年を除くと+6.52%、上昇した割合は76.2%になります。この間、NT倍率自体も平均+2.21%戻しました(上昇した割合84.8%)。日経平均が相対的に売られすぎた後は、日経平均の方が戻りやすかったと言えます。TOPIXも同じ60日で平均+2.63%(全日+1.55%)上がっており、市場全体が戻る中で日経平均がより強く戻った形です。
ただし、下位10%の日は2008年・2017年・2022年・2023年・2025年などに固まっていて、独立した局面は多くありません。「下位10%に入った日に買い、60営業日持つ」という売買ルールにすると、取引は19年で17回、年率3.15%(PF2.10)でした。取引回数が少なく、偶然の影響を排除しきれません。上位10%に入った日に買う版は22回、年率3.99%でした。
検証②:NT倍率の向きで売買
ルール:NT倍率が50日移動平均線より上にある間だけ日経平均を保有する(日経平均がTOPIXより強い流れに乗る)。事前に決めたのはこのルールで、感度は40日線・60日線で確かめます。結果を見たあとで、向きを反転した「50日線より下にある間だけ保有」も参考に計算しました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| NT>50日線の間保有 | 0.56倍 | −3.0% | −70.7% | 208 | 42% | 0.89 | 58% |
| (参考・反転版)NT<50日線の間保有 | 3.07倍 | 5.9% | −42.9% | 208 | 63% | 1.66 | 42% |
| (参考・反転版)1日遅れで売買 | 1.33倍 | 1.5% | −52.8% | 208 | 54% | 1.19 | 42% |
| (参考・反転版)2日遅れで売買 | 1.91倍 | 3.4% | −39.1% | 208 | 57% | 1.35 | 42% |
| (比較)日経平均<50日線の間保有 | 1.34倍 | 1.5% | −60.1% | 191 | 80% | 1.29 | 41% |
事前に決めたルール(NT倍率が50日線より上で保有)は、資産が0.56倍に減りました。最大下落率も−70.7%と、買い持ちの−61.4%より深くなっています。40日線で年率−4.32%、60日線で−4.13%と、期間を変えてもマイナスです。日経平均がTOPIXより強い流れに乗っても、日経平均の値上がりは取れませんでした。
参考:結果を見てから向きを反転した版
ここからは、上の結果を見たあとで向きを反転させた版です。事前に決めたルールではないので、参考扱いです。NT倍率が50日線より下、つまり日経平均がTOPIXより弱い間だけ持つと、年率5.94%、最大下落率−42.9%。40日線で6.89%、60日線で7.46%と、どの期間でもプラスでした。日経平均自身が50日線より下の間だけ持つ方法(年率1.51%)よりはっきり良く、NT倍率には日経平均の価格だけでは見えない情報が含まれていた可能性があります。両方の条件が重なる日は全体の23%だけでした。
反転版の利益は「翌日の戻り」に偏る
NT倍率が50日線より下の日の翌日、日経平均は平均+0.090%、それ以外の日の翌日は+0.004%でした。TOPIXも+0.068%と−0.002%で、日経平均だけでなく市場全体が翌日に戻っています。
売買をシグナルの1日後に遅らせると、年率は1.49%(PF1.19)まで落ちました。2日遅らせると3.38%です。シグナルが出た日の終値で売買できるかどうかで、成績が大きく変わります。NT倍率の日々の変化そのものに、翌日まで続く流れはありません(自己相関−0.017)。日経平均がTOPIXより弱く下げた直後の、短い反発を取っていたと考えられます。
反転版を年別に見ると、買い持ちを上回ったのは20年中9年です。2008年は−24.1%(買い持ち−42.1%)、2020年は+34.2%(同+16.0%)と下げや乱高下の年に強く、2024年は+0.9%(同+19.2%)、2025年は+2.1%(同+26.2%)と、日経平均が大きく上がった年に大きく出遅れました。2024年8月は、8月2日・5日・6日に保有しておらず、−5.81%・−12.40%の急落を避けた一方、6日の+10.23%も取り逃しています。
参考として、NT倍率が50日線より上なら日経平均、下ならTOPIXに乗り換える方法も計算しました(乗り換えは売りと買いの2回分のコスト)。19年で416回の乗り換えになり、1.14倍・年率0.69%でした。逆向き(下なら日経平均)でも1.53倍・年率2.20%で、どちらも日経平均の買い持ちに大きく負けます。TOPIXは配当を含まない価格指数で、配当利回りの差の分だけこの比較には誤差が残ります。
読み解き
- NT倍率の高さは「割高」のサインではなかった。上位10%の日の60日後も日経平均は平均+1.39%。NT倍率は19年で10倍から17倍へ上がり続けており、高い水準はそのまま続きやすい。
- NT倍率の向きに乗っても、日経平均の値上がりは取れなかった。50日線より上の間だけ保有すると年率−2.96%・最大下落率−70.7%。40日線・60日線でもマイナスで、期間を変えても救えない。
- 向きを反転した版は伸びたが、事後に選んだうえ脆い。年率5.94%・最大下落率−42.9%だが、保有初日の平均+0.230%は2日目以降の約3倍で、1日遅らせると年率1.49%。日経平均が大きく上がった2024〜2025年は大きく出遅れた。別の期間やデータで確かめるまでは、参考の発見にとどめる。
成績のまとめ(NT倍率が50日線より上の間だけ保有)
事前に決めたルールは年率−2.96%、最大下落率−70.7%で、買い持ちより成績も下げ幅も悪い。後半(2016年10月〜)は年率1.1%とプラスに戻ったが、前半−7.0%を取り戻すには遠い。向きを反転した版(50日線より下で保有)は年率5.94%と数字は良いが、結果を見てから選んだルールのため参考扱いとする。1日遅れで年率1.49%に落ちる脆さもある。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
// 日経平均(TVC:NI225)の日足チャートに追加する
indicator("NT倍率", overlay = false)
len = input.int(50, "移動平均の期間")
tpx = request.security("TSE:TOPIX", timeframe.period, close)
nt = close / tpx // NT倍率 = 日経平均 ÷ TOPIX
ma = ta.sma(nt, len)
hi = ta.percentile_nearest_rank(nt, 245, 90) // 過去1年の上位10%の境目
lo = ta.percentile_nearest_rank(nt, 245, 10) // 過去1年の下位10%の境目
plot(nt, "NT倍率", color = color.blue, linewidth = 2)
plot(ma, "移動平均", color = color.orange)
plot(hi, "上位10%", color = color.gray, style = plot.style_circles)
plot(lo, "下位10%", color = color.gray, style = plot.style_circles)
bgcolor(nt > ma ? color.new(color.blue, 88) : na, title = "保有(NT倍率が移動平均より上)")

