日経VI(恐怖指数):市場の不安の高まりから底を探る
- 日経VIはオプション価格から逆算した「今後1か月の予想変動率」。30なら1か月で±8.7%程度の値動きを織り込んでいる
- 日経VIが30以上の日の60日後リターンは平均+12.42%(全日平均+4.69%)。ただし独立した局面は7回だけ
- 「30上抜けで買い、60日保有」は最大下落率−15.1%と小さいが、取引は4回。年率16.1%は同じ期間の買い持ち17.4%に届かない
日経VIは「オプションの値段」から逆算した予想変動率
日経VI(日経平均ボラティリティー・インデックス)は、日経平均オプションの価格をもとに計算される指数です。オプションは「将来、決めた値段で買う(売る)権利」で、相場が大きく動きそうなときほど値段(保険料)が高くなります。この値段から逆に「市場はこれからどれくらい動くと見込んでいるか」を求めたものをインプライド・ボラティリティ(予想変動率)と呼びます。日経VIは、その今後1か月分を年率の%で表したものです。
急落の局面では、下落に備えてプット(売る権利)を買う人が増え、オプションが高くなります。日経VIが「恐怖指数」と呼ばれるのはこのためです。
「予想」と「実際」は別もの
過去の実際の値動きから計算する変動率はヒストリカル・ボラティリティ(HV)と呼びます。ここでは直近20営業日の騰落率の標準偏差を年率に直した「HV20」を使います。2021年9月以降、日経VIとHV20の相関は0.63。平均は日経VI 23.8に対してHV20 21.1で、81%の日で日経VIの方が高くなっていました。オプションの買い手が「保険料」を上乗せして払っているためと考えられます。値幅を測る指標としては#008 ATRの仲間です。
「日経VIが高い=これから下がる」ではありません。日経VIは向きを問わず「動きの大きさ」の予想です。急落の直後に高くなりやすいので下落と結びつけて語られますが、急反発も同じように「大きな動き」です。
実際の日経平均で見てみる
最大は2024年8月5日の70.69です。日経平均が−12.40%下げて31,458円になった日でした。2025年4月7日(終値31,136円、−7.83%)にも58.39まで上がりました。どちらも急落の当日がピークで、翌日には日経平均が+10.23%、+6.03%と反発し、日経VIは51.19、46.99に下がっています。
5年間で日経VIが30以上だった日は153日(12.4%)、40以上は25日(2.0%)だけです。年別に見ると2021年と2023年は0日、2022年は2日。一方、2026年は平均が32.6と高く、30以上の日が106日ありました。年間の最大は3月9日の57.00(日経平均−5.20%)です。2026年10月1日の日経VIは22.92でした。
元データでは、日経平均が−12.40%下げた2024年8月5日の日経VIが29.44で、翌日の8月6日に70.69となっていました。日経平均の騰落率と日経VIの変化の相関は、そのままでは0.07ですが、日付を1営業日前にずらすと−0.48になります。値が1営業日遅れて記録されていると判断し、前の営業日に付け替えました。
検証①:日経VIが高い日の後、日経平均は上がったか
まず、日経VIが25・30・40以上だった日の終値から、20営業日後・60営業日後に日経平均が何%動いたかを集計しました。期間は2021年9月〜2026年10月の約5年です。
| その日の日経VI | 日数(60日後) | 20日後 平均 | 60日後 平均 | 60日後 上昇率 | 局面 |
|---|---|---|---|---|---|
| すべての日 | 1,171 | 1.50% | 4.69% | 63.4% | — |
| 20未満 | 357 | 0.44% | 3.64% | 56.6% | — |
| 25以上 | 348 | 2.86% | 8.19% | 83.0% | 6 |
| 30以上 | 122 | 3.44% | 12.42% | 87.7% | 7 |
| 40以上 | 22 | 7.30% | 21.90% | 95.5% | 4 |
数字だけ見ると、「恐怖指数が高い時に買え」はそのとおりに見えます。しかし注意が必要です。日経VIが高い日は数日〜数週間続けて現れるため、日数を数えても独立した出来事の数は少ないのです。20営業日以上あいたら別の局面と数えると、30以上は7局面、40以上は4局面しかありません。2024年8月と2025年4月の急落を除いても、30以上の100日の60日後平均は+11.60%でしたが、その大半は2026年の日々です。5年間の日経平均がおおむね上昇基調だったことも、結果を押し上げています。
検証②:30上抜けで買い、60日保有
ルール:日経VIが30を下から上に抜けた日の終値で日経平均を買い、60営業日後に売る。保有中に再び上抜けたら、そこから60日に延長します。しきい値25・40、保有20日の版と、逆に「日経VIが20未満の間だけ持つ」版も比べました。コストなどの条件は共通の検証ルールのとおりですが、期間は日経VIのある2021年9月17日〜2026年10月2日(約5年)だけです。買い持ちも同じ期間で比べます。
| 戦略(2021年9月〜) | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち(同じ期間) | 2.24倍 | 17.4% | −26.3% | — | — | — | 100% |
| VI30上抜け→60日保有 | 2.12倍 | 16.1% | −15.1% | 4 | 75% | 26.97 | 44% |
| VI25上抜け→60日保有 | 1.42倍 | 7.2% | −21.6% | 4 | 50% | 14.14 | 62% |
| VI40上抜け→60日保有 | 1.94倍 | 14.1% | −15.1% | 2 | 100% | — | 22% |
| VI30上抜け→20日保有 | 1.79倍 | 12.3% | −15.1% | 6 | 67% | 9.93 | 29% |
| 日経VI20未満の間だけ保有 | 1.24倍 | 4.4% | −12.3% | 52 | 52% | 1.65 | 30% |
30の上抜けは5年で39回ありましたが、保有中の上抜けは延長になるため、実際の取引は5回です。うち決済済みは4回で、2022年1月26日(−1.76%)、5月6日(+3.47%)、2024年8月5日(+25.57%)、2025年4月3日(+18.33%)。5回目は2025年10月9日(48,580円)に買い、2026年は上抜けが続いたため、10月2日時点でも保有中です(含み益+40.61%)。PF26.97はこの4回だけから計算した値です。
最大下落率は−15.1%(2026年6月25日→7月29日)で、同じ期間の買い持ち−26.3%(2024年7月11日→2025年4月7日)より浅く済みました。急落の底近くで買い、急落前の高値圏では持っていなかったためです。
反対に、「日経VIが低い(20未満)=安心な時だけ持つ」方法は、取引52回・PF1.65でしたが年率4.4%。前半の年率13.36%に対し、後半は−3.86%と崩れました。
5年の評価で、検証の手順を一部変えた
ラボの検証は2007年からの19年を前提にしています。日経VIは2021年9月からしかないため、各指標を同じ考え方でこの5年だけで計算しました。最大下落率は同じ期間の買い持ち(−26.3%)と比べ、前半・後半は期間の中間日(2024年3月26日)で分けています。感度はしきい値を24と36に変えました。
検証③:19年分ある「実際の値動き」で確かめる
5年では足りないので、オプションの代わりに実際の値動き(HV20)で同じ考え方を19年分試しました。ルール:HV20が30を上抜けたら買い、60営業日保有。期間は通常どおり2007年4月〜です。
| 戦略(2007年4月〜) | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| HV20 30上抜け→60日保有 | 3.24倍 | 6.2% | −40.9% | 17 | 59% | 3.55 | 28% |
HV20が30以上の日の60日後平均は+5.94%(全日+2.24%)、上昇率73.9%でした。日経VIほど極端ではありませんが、同じ傾向は19年でも見られます。一方で、2008年9月18日に買った取引は、リーマン・ショックの下げに巻き込まれ、2008年9月24日→10月27日に−40.9%の最大下落を記録しました。17回の取引のうち最悪の1回は−25.24%でした。「恐怖が高い」は、まだ下がらないことを意味しません。取引は17回と少なく、PF3.55・後半10.74%・感度5.05〜5.87%でした。
読み解き
- 日経VIが高い日の後は、5年間では確かによく上がった。30以上の日の60日後平均は+12.42%で全日平均+4.69%の2倍以上、40以上なら+21.90%。ただし独立した局面は7回と4回しかない。
- 売買ルールにすると、下落は浅いがリターンは買い持ち並み。VI30上抜け→60日保有は年率16.1%・最大下落率−15.1%。同じ期間の買い持ちは17.4%・−26.3%。保有率44%で、最大下落率は買い持ちより浅かった。
- 19年に延ばすと、恐怖の最中に買うリスクが見える。HV20で代用すると年率6.2%・最大下落率−40.9%。2008年は「恐怖が高い」と判断した後も下げが続いた。5年の日経VIはこの種の長い下げ相場を含んでいない。
成績のまとめ(日経VIが30上抜け→60日保有)
評価は約5年・決済済み4回に基づき、PF26.97もほぼ2回の大勝ち(2024年8月、2025年4月)で決まっている。年率16.1%は同じ期間の買い持ち17.4%を下回った。19年分のHV20で同じ考え方を試しても取引は17回と少なく、2008年には−40.9%の下落があった。「恐怖指数が高い時に買う」は下落を浅くする可能性はあるものの、検証できた場面が少なすぎて、結論は日経VIのデータが増えるまで持ち越す。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("日経VI 30上抜け→60日保有", overlay = true)
// 日経平均(TVC:NI225)の日足チャートに表示する
vi = request.security("TOCOM:NVI", "D", close)
buy = ta.crossover(vi, 30)
var int left = 0
if buy
left := 60 // 上抜けのたびに60日へ延長
holding = left > 0
if left > 0
left -= 1
bgcolor(holding ? color.new(color.blue, 88) : na, title = "保有期間")
plotshape(buy, "日経VI 30上抜け", shape.triangleup, location.belowbar, color.green, size = size.tiny)
// 注意:データの日付が1営業日ずれている場合は、日経VIの急騰日と急落日を見比べて確認する

