窓(ギャップ):窓埋めの動きを狙う
- 日経平均では全営業日の53.2%で窓が開く。下窓は20日以内に84.9%が埋まったが、「必ず」ではない
- 下窓の日に買って窓埋めで売ると勝率76%。それでも年率−3.4%、最大下落率−70.1%と買い持ちに大きく負けた
- 勝ちは平均+1.61%、埋まらずに20日で切った負けは平均−5.43%。24%の負けが76%の勝ちを帳消しにした
窓は「前日の値幅の外」で始まること
窓(まど、英語ではギャップ)は、ローソク足とローソク足の間にできるすき間です。この記事では、始値が前日の高値より上で始まった日を上窓、前日の安値より下で始まった日を下窓と呼びます。日経平均は前の晩の米国市場や為替の動きを受けて寄り付くので、窓はよく開きます。
そして、価格が窓を開ける前の水準、つまり前日の終値まで戻ることを「窓埋め」と呼びます。上窓なら安値が前日終値以下に、下窓なら高値が前日終値以上になった日に、窓が埋まったと数えます。
下窓:始値 < 前日安値
上窓の窓埋め:安値 ≦ 前日終値
下窓の窓埋め:高値 ≧ 前日終値
窓の大きさ = 始値 ÷ 前日終値 − 1
窓は「珍しいサイン」ではない
約19年半・4,760営業日のうち、上窓は1,418日(29.8%)、下窓は1,116日(23.4%)。2日に1日以上は窓が開いています。窓の大きさ(前日終値比)の中央値は上窓0.75%、下窓−0.82%でした。
#017 酒田五法では、窓を「安値>前日高値(その日のうちに前日の値幅に戻らない窓)」と厳しく数え、上方向714日でした。今回は始値だけで判定するので、その約2倍の数になります。
「窓が大きいほど大事件」と考えがちですが、日経平均の始値は寄り付き直後の計算値で、まだ値が付いていない銘柄が残るため、窓は実際の動きより小さく出やすいと考えられます。2024年8月5日は終値が前日比−12.40%の大暴落でしたが、始値の窓は−1.84%でした。データ全体でも、窓の最大は上窓2.13%、下窓−2.47%にとどまります。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日では、上窓が141回、下窓が87回開きました。上昇相場だったぶん、上窓が多めです。
2025年4月の急落を見てみます。4月3日は始値が前日終値35,726円より1.91%低い下窓でした。4月7日も−1.85%の下窓で始まり、終値は31,136円(−7.83%)まで下げました。それでも4月7日の窓(前日終値33,780円)は3営業日後の4月10日に埋まっています。一方、4月3日の窓が埋まったのは16営業日後の4月25日でした。同じ急落の中でも、埋まるまでの日数は大きく違います。
2026年9月以降は上窓が目立ちます。9月18日・9月30日・10月1日の上窓は、10月2日時点でどれも埋まっていません。10月1日の窓の目標(前日終値)は66,754円で、10月2日の終値68,309円より下にあります。
検証①:窓は何日で埋まるのか
すべての窓について、前日終値まで戻るのに何営業日かかったかを数えました。窓を開けた当日のうちに戻れば「当日」です。データの最後(2026年10月2日)まで戻らなかった窓は「埋まっていない」に数えます。
「窓は埋まる」は、半分は正しいと言えます。下窓の47.1%は翌日までに、70.8%は5営業日以内に埋まりました。ただし20営業日(約1か月)たっても、下窓の15.1%、上窓の19.4%は残っています。
「いつかは埋まる」という意味でも、例外があります。いちばん時間がかかった下窓は2007年7月23日の窓で、埋まるまで1,854営業日かかりました。上窓の84回は今も埋まっていません。古いものは2009年3月11日(目標7,055円)で、日経平均がそこまで戻ることは当面考えにくいでしょう。上窓が埋まりにくく、下窓が埋まりやすいのは、日経平均が長い目で見て上がってきたためです。下窓で唯一埋まっていないのは、2026年7月2日の窓(目標70,475円)です。
大きな窓ほど埋まりにくい。そして窓がなくても「戻る」
| 窓の大きさ | 回数 | 当日に埋まる | 5日以内 | 20日以内 |
|---|---|---|---|---|
| 下窓 0.5%未満 | 304 | 58.2% | 88.8% | 94.4% |
| 下窓 0.5〜1% | 384 | 30.5% | 72.7% | 86.2% |
| 下窓 1%以上 | 428 | 10.7% | 56.3% | 77.1% |
| 上窓 0.5%未満 | 413 | 56.4% | 79.2% | 89.8% |
| 上窓 0.5〜1% | 574 | 26.0% | 66.4% | 82.1% |
| 上窓 1%以上 | 431 | 7.4% | 49.0% | 69.8% |
| (比較)窓なし・始値<前日終値 | 1101 | 58.1% | 85.3% | — |
| (比較)窓なし・始値>前日終値 | 1125 | 58.2% | 82.2% | — |
窓の大きさで分けると、差ははっきりしています。1%以上の下窓が当日に埋まったのは10.7%だけで、0.5%未満の58.2%を大きく下回ります。窓が大きいほど、目標の前日終値は遠いのです。
比較の2行は、窓は開かなかったものの、始値が前日終値と違う値で始まった日です。こうした日も、5日以内に8割以上が前日終値に戻りました。「元の値段に戻る」こと自体は、窓に限らずよく起きることで、窓に特別な引力があるわけではありません。窓のほうが埋まりにくいのは、単に前日終値から遠いところで始まるためと考えられます。
検証②:下窓で買い、窓埋めで売る
ルール:下窓を開け、終値でもまだ前日終値を下回っている日(938日)の終値で買う。終値が窓を開ける前日の終値以上に戻ったら売り(窓埋め)、戻らなければ20営業日後に売る。保有中に出た新しい下窓は無視します。最大保有日数を16日・24日にした版も試しました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| 下窓→窓埋めか20日で売り | 0.51倍 | −3.4% | −70.1% | 340 | 76% | 0.92 | 58% |
| 同 最大16日 | 0.75倍 | −1.5% | −62.0% | 365 | 75% | 0.99 | 56% |
| 同 最大24日 | 1.05倍 | 0.3% | −59.6% | 315 | 79% | 1.08 | 62% |
| 下窓1%以上だけ→窓埋めか20日 | 0.48倍 | −3.7% | −67.4% | 173 | 67% | 0.83 | 41% |
| (比較)窓なしの下落日→前日終値回復か20日 | 1.77倍 | 3.0% | −58.3% | 498 | 83% | 1.19 | 68% |
4回に3回は窓が埋まって利益で終わります。それなのに19年半で資産は0.51倍、年率−3.4%。最大下落率は−70.1%で、買い持ちの−61.4%より深くなりました。大きな窓だけに絞ると、勝率は67%に下がり、年率も−3.7%と悪化します。
24%の負けが、76%の勝ちを帳消しにする
出口の内訳を見ると理由がわかります。窓が埋まって売れた257回(76%)は、平均4.3日で平均+1.61%の利益。勝率は当然100%です。一方、20日たっても埋まらず売った83回(24%)は、平均−5.43%の損失で、利益が出たのはわずか4%でした。平均の利益は平均の損失の0.30倍しかありません。損益を単純に足すと、窓埋めの分が+413%、20日打ち切りの分が−451%で、負けが勝ちを上回ります。
損失がもっとも大きかったのは、2020年2月14日に23,688円で買った取引で−28.42%。コロナ・ショックの下げをまるごと受けました。この窓(目標23,828円)が埋まったのは176営業日後の2020年11月5日です。2番目は2008年9月16日、リーマン・ショック直後の下窓で買った取引で−27.34%でした。この窓は4営業日後の9月22日に高値では目標の12,215円に届いていますが、終値では届かず、売れないまま急落に巻き込まれています。
窓が埋まらないのは、相場の流れが本当に変わったときです。「必ず埋まる」と信じて待つと、まさにその場面で損失がふくらみます。最大保有日数を24日に延ばすと年率0.3%(PF1.08)まで戻りますが、16日に縮めると−1.5%。どちらもPF1.3には遠く届きません。
比較として、窓は開かずに下げて引けた日に同じルールで買うと、年率3.0%・PF1.19でした。下窓の日より成績が良いのです。下窓の日(終値でも前日終値未満)の5日後の平均リターンは+0.14%で、窓なしの下落日+0.43%、すべての日+0.19%を下回りました。下窓は「買い場のサイン」というより、下げが強いことのサインだったと考えられます。
読み解き
- 「窓は必ず埋まる」は誇張。下窓は20日以内に84.9%、250日以内に96.5%が埋まる。ただし1,854営業日かかった例もあり、上窓は84回が今も埋まっていない。埋まりやすさの差は、日経平均の長期的な上昇によるところが大きい。
- 窓に特別な引力はない。窓のない日でも5日以内に8割以上が前日終値へ戻る。窓が大きいほど埋まりにくく、1%以上の下窓は当日に10.7%しか埋まらない。
- 勝率76%でも資産は0.51倍。窓埋めで取る利益は平均+1.61%と小さく、埋まらなかったときの損失は平均−5.43%。コロナ・ショックやリーマン・ショックのような場面で、窓は埋まらない。高い勝率が損失の大きさを隠す典型例だ。
成績のまとめ(下窓で買い、窓埋めか20日で売り)
取引回数は十分だが、成績は振るわなかった。PF0.92は損失が利益を上回ることを意味し、最大下落率−70.1%は買い持ちより深い。前半の年率−6.7%に対し後半も−0.2%とマイナスで、最大保有日数を16日にすると年率−1.5%。窓が埋まる確率の高さは本当だが、埋まらなかったときの損失がそれを上回り、売買のルールとしては使えない。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("窓(ギャップ)と窓埋め", overlay = true)
gapUp = open > high[1] // 上窓:始値>前日高値
gapDn = open < low[1] // 下窓:始値<前日安値
var float target = na // 窓埋めの目標=窓を開ける前日の終値
var int dir = 0
if gapUp
target := close[1]
dir := 1
if gapDn
target := close[1]
dir := -1
filled = (dir == 1 and low <= target) or (dir == -1 and high >= target)
plot(target, "窓埋めの目標", color = dir == 1 ? color.green : color.red, style = plot.style_linebr)
plotshape(gapUp, "上窓", shape.triangleup, location.belowbar, color.green, size = size.tiny)
plotshape(gapDn, "下窓", shape.triangledown, location.abovebar, color.red, size = size.tiny)
plotshape(filled, "窓埋め", shape.circle, location.top, color.orange, size = size.tiny)
if filled // 埋まったら目標を消す(直近の窓だけを追う)
target := na
dir := 0

