パラボリックSAR:加速する手じまい線で、ドテン売買する
- 日経平均のSARは19年で409回反転し、トレンドは平均11.6日しか続かない。4本に1本は5日以内に終わる
- 「SARが価格の下の間だけ持つ」は年率3.9%・PF1.28。取引は205回あるが、PFは1.3を下回った
- 売り側は年率−6.3%で、ドテンは年率−2.6%。点に触れた瞬間に売る逆指値なら年率5.7%・PF1.40まで改善した(参考)
パラボリックSARは「加速しながら追いかける点」
パラボリックSARは、J・W・ワイルダーが1978年の著書でRSIやATRと一緒に発表した指標です。上昇トレンドでは価格の下に、下降トレンドでは価格の上に、1日1つずつ点(SAR)を打ちます。点の軌跡が放物線(パラボラ)のように曲がるので「パラボリック」と呼ばれます。
計算に使うのは2つの値です。EP(極値)は、いまのトレンドが始まってからの最高値(下降トレンドなら最安値)。AF(加速因子)は、SARがEPへ近づく割合です。SARは毎日、EPとの差のAF倍だけEPに近づきます。
AF:0.02から始め、EPを更新するたびに+0.02、上限0.2。反転したら0.02に戻す
上昇トレンド中は、SARが直近2日の安値より上に来ないように調整します。そして安値がSARを割り込んだ日に、トレンドは下降へ反転します。反転した日のSARは、それまでのEP(上昇中の最高値)に置き直され、そこから今度は上から価格を追いかけ始めます。本記事の計算はTradingViewの標準関数(ta.sar)と同じ手順です。
見方:点は「時間がたつほど厳しくなる逆指値」
パラボリックSARの本来の役目は、手仕舞いの位置を示すことです。トレンドが始まったばかりのときは点が遠く、多少の押し目では触れません。高値更新が続くとAFが増え、点がどんどん迫ってきます。「トレンドが長く続くほど、少しの反落で降ろされる」ように作られているのです。
日経平均で数えると、上昇トレンドの日は全体の57.5%、反転は409回でした。トレンドの平均日数は上昇13.4日・下降9.9日で、最長でも上昇43日・下降37日です。AFが上限0.2に達していた日は5.8%しかありません。
「SARが反転した点=相場の転換点」ではありません。SARは価格が一定以上戻せば必ず反転するように作られていて、反転後のトレンドの24.6%は5日以内に終わりました。転換を当てる道具ではなく、「ここを割ったら降りる」位置を機械的に決める道具です。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日でSARは43回反転しました。加速の様子がよくわかるのは2026年7月31日からの上昇です。この日に上昇へ反転し、SARは60,449円に置かれました。最初の3日はAFが0.02のままで、SARは8月4日でも60,644円とほとんど動きません。8月5日に高値66,303円を付けてAFが0.04になり、そこから高値更新のたびに加速。8月14日にはAFが0.12、SARは62,847円まで上がり、8月18日には64,372円に迫りました。そして8月21日、終値66,016円で下降へ反転しています。
急落の場面も見ておきます。2025年は3月31日(終値35,617円)に下降へ反転していたため、4月7日の終値31,136円は持たずに済みました。買い直しは4月14日の33,982円です。2024年も7月17日(41,098円)に下降へ反転しており、8月5日の急落(終値31,458円)の時点では手仕舞い済みでした。
反対に、振り回された場面もあります。2026年6月8日に終値64,024円で売ったあと、6月15日には69,317円で買い直しました。1週間で8%高く買い戻したことになります。2026年10月2日時点では、9月18日(65,019円)からの上昇トレンドが続いていて、SARは64,493円、AFは0.10です。
検証①:SARが価格の下にある間だけ持つ
ルール:SARが上昇へ反転した日の終値で買い、下降へ反転した日の終値で売る(SAR(0.02, 0.02, 0.2)、日足の高値・安値で計算)。感度は、AFの増分を0.016と0.024(±20%)に変えて確かめました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| SAR 買いのみ(増分0.02) | 2.11倍 | 3.9% | −55.0% | 205 | 44% | 1.28 | 58% |
| SAR 買いのみ(増分0.016) | 2.25倍 | 4.3% | −37.9% | 182 | 44% | 1.34 | 57% |
| SAR 買いのみ(増分0.024) | 1.48倍 | 2.1% | −54.7% | 225 | 44% | 1.16 | 57% |
| +200日線より上の時だけ買う | 1.69倍 | 2.7% | −33.4% | 153 | 43% | 1.29 | 41% |
| (参考)売りのみ | 0.28倍 | −6.3% | −80.6% | 205 | 32% | 0.88 | 42% |
| (参考)ドテン(常に買いか売り) | 0.60倍 | −2.6% | −67.3% | — | — | — | 100% |
買いのみのルールは、平均13.3日持って年10.6回のペースで売買し、資産は2.11倍になりました。取引は205回と十分で、最大下落率−55.0%は買い持ちの−61.4%より小さく済んでいます。ただしPFは1.28で、1.3をわずかに下回ります。コストをゼロにすると年率6.14%・PF1.44まで戻るので、往復0.2%のコストが響いています。
勝率44%で、勝ちの平均+4.64%に対して負けの平均は−2.83%。典型的なトレンドフォローの形です。ただ、利益は一部の大勝ちに偏っていました。全205回の損益を単純に足すと+92.14%ですが、上位10回の勝ちだけで+131.66%あり、それを除くと−39.52%です。
ドテン(常に買いか売りのどちらかを持つ)はラボの「買いのみ」の条件から外れるので、参考扱いとしています。売り側の数字は、空売りに金利や貸株料がかからない前提の参考値です。
売り側が足を引っ張る
SARが価格の上にある間だけ空売りすると、勝率32%・PF0.88で資産は0.28倍まで減りました。それを買い側と合わせたドテンは年率−2.6%、最大下落率−67.3%で、買い持ちより大きく沈みます。後半(2016年10月〜)に限ればドテンは年率0.82%とわずかにプラスですが、売りのみは後半も年率−7.59%でした。
理由の一つは、下降トレンドの後の値動きにあります。SARが下降中だった日の20営業日後の平均リターンは+0.95%で、上昇中だった日の+0.60%や全日平均の+0.75%を上回りました。19年で約3.9倍になった日経平均では、下げの後はむしろ戻りやすく、そこで売りを持ち続けると損が積み上がります。
検証②:点に触れた瞬間に売ったら
実際のトレードでは、SARはその日の逆指値(この値段を割ったら売る注文)として使われることがよくあります。ラボの共通ルールは「シグナル当日の終値で売買」なので、安値がSARを割った日も終値まで待って売っています。この差を確かめるため、売りだけを「当日のSARの値(寄付からSARより下ならその寄付)」に変えた版を参考として計算しました。買う日・売る日は主ルールと同じです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF |
|---|---|---|---|---|---|---|
| SAR 買いのみ(終値で売る) | 2.11倍 | 3.9% | −55.0% | 205 | 44% | 1.28 |
| (参考)SARの値で売る | 2.91倍 | 5.7% | −47.9% | 204 | 44% | 1.40 |
下降へ反転した日の終値は、その日のSARより中央値で0.22%、平均で0.30%下にありました。最大では4.19%下です。205回のうち66回は、寄付の時点ですでにSARを下回っていました。1回あたり0.2〜0.3%の差でも、205回積み重なると年率は3.9%から5.7%に変わります。増分を0.016・0.024にしても、逆指値版は年率6.41%・4.13%でした。
ただし、この版はラボの共通ルールの外にあります。逆指値は値段どおりに約定するとは限らず、日経平均そのものは売買できません。数字は「SARは本来、逆指値として作られた指標だ」ということを示す参考値として受け取ってください。
読み解き
- 買いのみのSARは、PF以外は安定していた。取引205回、最大下落率−55.0%、後半の年率9.1%、増分±20%でもプラス。PFは1.28にとどまり、年率3.9%は買い持ちの7.3%の半分ほど。同じ系統の#018 ADX・DMI(PF1.31)とほぼ同じ水準だった。
- ドテンは売り側が壊す。売りのみは年率−6.3%・PF0.88。長期で上がってきた日経平均では、下降トレンドの後の方がむしろよく上がっており、売りを持ち続ける理由がなかった。
- SARは「終値で売る」と性能を落とす。反転日の終値はSARより中央値0.22%下。逆指値として使う版はPF1.40まで上がった。指標の設計どおりの使い方と、ラボの共通ルールとのずれが、PF1.3に届かなかった一因と考えられる。
成績のまとめ(SARが価格の下の間保有)
取引205回で、PFは1.28だった。前半(〜2016年9月)は年率−1.3%と負けていて、成績は後半の9.1%に支えられている。増分0.016なら年率4.3%・PF1.34、0.024なら年率2.1%・PF1.16と、パラメータで差が大きい点にも注意が必要。年率は買い持ちの7.3%を大きく下回り、最大下落率も−55.0%と小さくはない。ドテンは買いのみの条件外のため参考扱いで、参考値は年率−2.6%だった。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("パラボリックSAR(買いのみ)", overlay = true)
afStart = input.float(0.02, "AFの初期値", step = 0.002)
afStep = input.float(0.02, "AFの増分", step = 0.002)
afMax = input.float(0.2, "AFの上限", step = 0.02)
s = ta.sar(afStart, afStep, afMax)
up = s < close // 点が価格の下=上昇トレンド
plot(s, "SAR", color = up ? color.green : color.red, style = plot.style_circles, linewidth = 2)
plotshape(up and not up[1], "上昇へ反転(買い)", shape.triangleup, location.belowbar, color.green, size = size.tiny)
plotshape(not up and up[1], "下降へ反転(売り)", shape.triangledown, location.abovebar, color.red, size = size.tiny)
bgcolor(up ? color.new(color.green, 92) : na, title = "保有中")

