サイコロジカルライン:上がった日の割合から過熱と悲観を見る
- 12日中3日以下しか上がらなかった日(171日)は、20営業日後に平均+2.07%。全日平均+0.75%の約2.8倍だった
- 「25%以下で買い、75%以上で売り」は年率3.7%・PF2.18。#002 RSI(年率1.7%)を上回ったが、取引は19年で31回しかない
- 日経平均は上がる日が52.8%と多いため、25%以下は理論値7.3%に対して実際は3.6%しか出現しない
サイコロジカルラインは「上がった日の割合」
サイコロジカルライン(Psychological Line、略してPSY)は、直近N日のうち前日より終値が上がった日の割合を%で表す指標です。期間は12日が一般的です。日本の投資家のあいだで広く使われてきた指標で、国内の証券会社のチャートツールにはたいてい入っていますが、海外の解説ではあまり見かけません。誰がいつ考案したかについては確かな記録が見当たらないため、ここでは触れません。
考え方は「投資家の心理」です。12日のうち9日も上がれば、多くの人が強気になって買いが一巡しやすい。逆に12日中3日しか上がらなければ、悲観が行き過ぎて反発しやすい。この心理の偏りを、上昇した日数という一番単純な数字で測ろうとしています。
コイン投げと比べると、偏りが見える
もし毎日の上げ下げが五分五分のコイン投げなら、12日中3日以下しか上がらない確率は7.3%、9日以上上がる確率も同じ7.3%です(二項分布)。ところが実際の日経平均(2007年4月〜2026年10月、4,760営業日)を数えると、様子が違います。
| 12日中の上昇日数 | サイコロ | 実際の出現率 | コイン投げの理論値 |
|---|---|---|---|
| 2日 | 16.7% | 0.44% | 1.61% |
| 3日 | 25.0% | 3.03% | 5.37% |
| 6日 | 50.0% | 24.26% | 22.56% |
| 9日 | 75.0% | 6.34% | 5.37% |
| 10日 | 83.3% | 2.16% | 1.61% |
| 25%以下の合計 | — | 3.6% | 7.3% |
| 75%以上の合計 | — | 9.1% | 7.3% |
日経平均は上がった日が52.8%と、下がった日(47.2%)より多い市場でした。その分、分布全体が右にずれ、25%以下は理論の半分(3.6%、172日)しか現れず、75%以上は理論より多い9.1%(435日)現れます。「25%で買い、75%で売り」は、買いの合図がめったに出ず、売りの合図は出やすい、という非対称なルールになります。
「サイコロジカルラインが0%=12日連続下落なら絶好の買い場」とは限りません。0%になったのは2008年7月4日の1回だけ(12日連続の下落)で、その後にリーマン・ショックが続きました。極端な値ほど出現が少なく、統計としても頼りになりません。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日で、サイコロが25%以下だった日は7日だけ、75%以上だった日は43日ありました。買いの合図は3回出ています。2024年9月13日(36,582円)に買い、10月4日(38,636円)に75%へ達して売りで+5.41%。2026年3月30日(51,886円)に買い、4月16日(59,518円)に売りで+14.51%。そして2026年9月15日(63,484円)に3回目の買いが出て、10月2日(68,309円、サイコロ58.3%)時点ではまだ保有中です。
反対に、2025年4月の急落では合図が出ませんでした。4月7日の終値31,136円の時点で、RSI(14)は14.0と大きく売られすぎを示したのに、サイコロは33.3%(上昇4日)にとどまっています。急落は数日に集中したため、12日のうち上昇した日の「数」はそれほど減らなかったのです。大きく下げても、下げた日数が少なければサイコロは反応しません。
検証①:25%以下で買い、75%以上で売り
ルール:12日サイコロジカルラインが25%以下(上昇3日以下)になったら買い、75%以上(上昇9日以上)になったら売り。出口を50%に早める版、日数で手仕舞う版、200日移動平均線より上の時だけ買う版も試しました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| サイコロ12 25%→75% | 2.04倍 | 3.7% | −54.3% | 31 | 68% | 2.18 | 35% |
| サイコロ12 25%→50% | 1.19倍 | 0.9% | −30.7% | 41 | 68% | 1.33 | 9% |
| サイコロ12 25%で買い→20日保有 | 2.16倍 | 4.0% | −40.0% | 40 | 68% | 2.06 | 21% |
| サイコロ12 25%(200日線より上)→75% | 1.97倍 | 3.6% | −27.0% | 19 | 74% | 5.76 | 18% |
| サイコロ12 33%(上昇4日以下)→75% | 2.70倍 | 5.2% | −56.3% | 54 | 67% | 2.07 | 57% |
| サイコロ10 25%→75%(感度) | 2.60倍 | 5.0% | −54.3% | 28 | 79% | 2.97 | 41% |
| サイコロ14 25%→75%(感度) | 1.38倍 | 1.7% | −55.4% | 11 | 73% | 2.08 | 30% |
主ルールは年率3.7%、PF2.18、勝率68%。1回の取引は平均53.4日続き、平均+2.62%でした。数字だけ見ると悪くありませんが、19年で31回しか取引がありません。どの版も取引回数は少なく、回数不足はサイコロ25%という条件そのものの性質です。
入口には力がある。足を引っ張るのは1回の大負け
#002のRSIでは「30割れの後は戻りやすいが、出口で失敗する」という結果でした。サイコロも入口ははっきり有効に働いています。25%以下の日の20日後の上昇率は62.0%、平均は全日平均の約2.8倍です。逆に75%以上の日は+0.34%と、全日平均の半分以下でした。
問題は負け方です。31回のうち負けは10回ですが、そのうち1回、2008年6月27日に買って2009年1月5日まで持ち続けた取引が−33.43%でした。12日連続で下げた2008年7月4日を含め、その後リーマン・ショックの下げの中で一度も75%に届かず、売る機会がなかったのです。負けの合計−68.71%のうち、ほぼ半分がこの1回です。
出口を50%に早めると、この大負けは避けられ最大下落率は−30.7%まで縮みますが、年率は0.9%に落ちました。保有率9%と、相場にいる時間が短すぎて上昇を取り逃します。出口を早めるほど安全になり、そのぶん儲けも消えるという、逆張り系に共通の構図です。
検証②:#002 RSIと比べる
RSIは「上げ幅と下げ幅の比率」、サイコロは「上げた日数の比率」。どちらも直近の上げ下げのバランスを見ますが、値幅を使うかどうかが違います。両者の相関は0.65で、似ているようで別物です。サイコロが25%以下だった172日のうち、RSI(14)も30未満だったのは43日だけ。サイコロ25%以下の日のRSI(14)は、中央値で35.0でした。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| サイコロ12 25%→75% | 2.04倍 | 3.7% | −54.3% | 31 | 68% | 2.18 | 35% |
| RSI14 30→70(#002) | 1.38倍 | 1.7% | −61.4% | 17 | 82% | 2.04 | 48% |
| RSI12 30→70 | 1.47倍 | 2.0% | −57.3% | 24 | 75% | 1.94 | 51% |
| RSI9 30→70 | 2.20倍 | 4.1% | −53.4% | 41 | 66% | 2.17 | 47% |
| (参考)サイコロ12が75%以上の日だけ現金 | 3.39倍 | 6.5% | −60.7% | 113 | 73% | 1.79 | 91% |
同じ12日で比べると、サイコロ(年率3.7%)はRSI12(2.0%)を上回りました。RSIは値幅を使うので、2020年3月13日(RSI(14)が13.8)のような急落の最中に30を割り込み、下げの途中で買いの合図を出します。このときサイコロは33.3%で、まだ合図を出していません。サイコロは「下げた日数」がたまるのを待つため、急落の最中には買いにくい。その代わり、2025年4月のような短く鋭い下げでは合図が出ません。
表の最下段は、買いの条件を使わず「75%以上の日だけ現金にする」という売り側だけのルールです。取引113回、PF1.79、期間10日・14日でも年率6.71%・7.20%と、数字だけ見ればそろっています。ただし保有率91%で中身はほぼ買い持ちです。年率6.5%は買い持ちの7.3%を下回り、最大下落率も−60.7%と0.7ポイントしか違いません。「75%以上は上がりにくい」という傾向は確かにありますが、売買で上乗せできるほどの差ではありませんでした。
読み解き
- サイコロ25%以下は、短期の買い場として機能していた。20日後の平均は+2.07%で全日平均の約2.8倍、上昇率62.0%。日数だけで数える素朴な指標でも、売られすぎの偏りはとらえている。
- ただし合図が少なすぎる。日経平均は上がる日が52.8%と多く、25%以下の出現率は3.6%と理論の半分。19年で取引31回では、成績が数回の取引に左右される。実際、期間を10日にすると年率5.0%、14日では1.7%と大きく振れた。
- RSIより良かったのは「急落の途中で買いにくい」ためと考えられる。同じ12日でもRSI12の年率2.0%を上回った。それでも2008年は−33.43%の大負けを避けられず、逆張りの弱点である長い下げ相場には無力だった。
成績のまとめ(サイコロ12 25%以下で買い→75%以上で売り)
PF2.18、後半(2016年10月〜)の年率5.6%は前半1.8%を上回り、期間を10日・14日に変えてもプラスを保った。ただし取引は19年で31回、14日では11回しかなく、年率が1.7〜5.0%と振れる幅も大きい。年率3.7%は買い持ち7.3%の約半分で、2008年の1回の大負けが成績を大きく削っている。「25%以下は戻りやすい」という傾向は他の条件と組み合わせる材料として残し、単独の売買ルールとしては取引が少なすぎる。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("サイコロジカルライン", overlay = false)
len = input.int(12, "期間")
upDays = math.sum(close > close[1] ? 1 : 0, len) // 前日より上がった日数
psy = upDays / len * 100
plot(psy, "サイコロ", color = color.blue)
hline(75, "75%", color = color.red)
hline(50, "50%", color = color.gray, linestyle = hline.style_dotted)
hline(25, "25%", color = color.green)
// 25%以下で買い、75%以上で売り
var bool inPos = false
buySig = not inPos and psy <= 25
sellSig = inPos and psy >= 75
if buySig
inPos := true
else if sellSig
inPos := false
plotshape(buySig, "買い", shape.triangleup, location.bottom, color.green, size = size.tiny)
plotshape(sellSig, "売り", shape.triangledown, location.top, color.red, size = size.tiny)

