「ADXでダマシを消せば、ゴールデンクロスは完璧になりますか?」
- 19年間のゴールデンクロス48回のうち、当日のADXが25を超えていたのは7回だけ。クロス当日のADXの中央値は16.7
- フィルターは負け35回のうち31回(89%)を落としたが、+10%以上の大勝ち8回のうち6回も落とした
- 最大下落率は−18.7%まで浅くなったが、取引7回・年率1.4%。感度×1.2では取引が0回になった
役割分担:EMAが「いつ」、ADXが「やるか」
部品は2つです。#006 EMAの20日線と50日線の交差は、上昇へ向きが変わったタイミングを知らせます。#018 ADXは、向きを問わずトレンドの強さを0〜100で表します。25を超えると「トレンドがある」とみなすのが一般的な目安です。
かつ ADX(14) > 25
売り:EMA20 < EMA50
※当日ADXが25以下なら
次のゴールデンクロスまで待つ
「ADXが高い=上昇が強い」ではありません。ADXは上げでも下げでも大きくなります。ただし今回、ADXが25を超えていたクロス7回は、すべて+DI>−DI(上昇の力が優勢)でした。下落の勢いを誤って拾った例はありません。
実際の日経平均で見てみる
2025年5月15日(37,755円)のクロスはADX25.7で条件を満たし、2026年3月30日のデッドクロスまで213日保有して+37.2%でした。次の2026年4月9日(55,895円)はADX21.7で見送り。ところがこのクロスは7月31日まで続き、+14.9%の上昇を逃しています。10月1日にもクロスが出ましたが、ADXは14.6で見送りです。10月2日時点で、EMA単独は保有中、組み合わせは現金です。
検証:部品単独と組み合わせ
ルール:上の式のとおり。部品はそれぞれの記事の主ルール(EMA20>EMA50の間保有、+DI>−DIの間保有)を同じ条件で再計算しました。感度は4つの整数(20・50・14・25)をすべて×0.8(16・40・11・20)と×1.2(24・60・17・30)にそろえた2通りです。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | PF | 勝率 | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| EMA20×50 単独(#006) | 1.8% | −39.2% | 48 | 1.45 | 27% | 62% |
| +DI>−DI 単独(#018) | 3.1% | −32.9% | 233 | 1.31 | 26% | 52% |
| GC×ADX>25(主ルール) | 1.4% | −18.7% | 7 | 2.83 | 43% | 12% |
| 感度×0.8(16・40・11・20) | 2.1% | −23.1% | 27 | 1.94 | 30% | 33% |
| 感度×1.2(24・60・17・30) | 0.0% | 0.0% | 0 | — | — | 0% |
PFは1.45から2.83へ、最大下落率は−39.2%から−18.7%へ改善しました。ただし保有率は62%から12%に落ち、最終資産は1.43倍から1.31倍に減っています。ADX30を求める×1.2版では、条件を満たすクロスが19年間で1回もありませんでした。
検証②:落としたクロスはダマシだったか
EMAのクロス48回はすべて「クロスで買い、デッドクロスで売り」の1取引に対応し、組み合わせの7取引はその一部です。そこで、残した7回と落とした41回(10月2日時点で保有中の1回を含む)を比べます。
| クロス当日のADX | 回数 | 勝ち | 負け | 平均 | 勝ちの合計 | 負けの合計 | PF |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 25超(残した) | 7 | 3 | 4 | +4.80% | +52.0% | −18.4% | 2.83 |
| 25以下(落とした) | 41 | 10 | 31 | +0.72% | +152.5% | −123.0% | 1.24 |
負けた35回のうち31回(89%)を落としたので、「ダマシ除去」としては狙いどおりです。しかし勝った13回のうち10回(77%)も落としました。落とした勝ちの合計+152.5%は、避けた負けの合計−123.0%を上回ります。落としたクロスは、全体としては勝ち越していたのです。
逃した大勝ちは、2012年11月19日(ADX14.6、+42.2%)、2020年5月25日(ADX14.4、+35.5%)、2023年11月14日(ADX16.9、+16.6%)など。アベノミクス相場やコロナ・ショック後の回復は、どれも低いADXから始まりました。
2つを重ねて初めて見えること
ADXが25を超える日は全期間の34.1%あるのに、クロス当日に限ると48回中7回(15%)です。クロスは向きが変わった直後、ADXは過去14日を平滑化した遅い値なので、両者のタイミングがそもそもずれています。毎日の状態で分けると、ADX自体は情報を持っていました。
| 毎日の状態 | 日数 | 20日後の平均 | 上昇率 |
|---|---|---|---|
| EMA20>50 × ADX>25 | 986 | +0.92% | 60.2% |
| EMA20>50 × ADX≦25 | 1,937 | +0.41% | 55.7% |
| EMA20<50 × ADX>25 | 639 | +1.59% | 63.1% |
| EMA20<50 × ADX≦25 | 1,178 | +0.71% | 57.4% |
上昇中はADX>25の日のほうが20日後の成績が良く(+0.92%対+0.41%、全日平均+0.75%)、強さの確認には意味があります。問題は「クロス当日」という一点で確かめたことです。参考に、EMAが上向きの間にADXが25を超えた日に買う版も試すと年率0.8%(取引30回)で、こちらも単独のEMAに届きませんでした(参考扱いです)。
読み解き
- ダマシは減ったが、大勝ちも減った。負け35回中31回を落とした一方、+10%以上の勝ち8回中6回も落とした。落とした41回のPFは1.24で、ダマシの集まりではなかった。
- クロスとADXは同じ日にそろいにくい。クロス当日のADX中央値は16.7。転換点ではADXがまだ育っていないため、フィルターがほぼ常に「見送り」を出す。
- 下落率の改善は保有率の低さによる。−18.7%は買い持ち−61.4%より浅いが、保有率12%・取引7回では、成績は2025年5月の1回(+37.2%)に大きく依存する。
成績のまとめ(EMA20×50のGCかつADX>25で買い、DCで売り)
19年で7回しか売買せず、パラメータを×1.2にすると条件を満たすクロスが消える。PF2.83と最大下落率−18.7%は魅力的に見えるが、少数の取引に支えられた数字で、年率1.4%は部品のEMA単独(1.8%)、+DI>−DI単独(3.1%)、買い持ち(7.3%)のいずれにも届かない。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("EMAクロス × ADXフィルター", overlay = true)
fLen = input.int(20, "短期EMA")
sLen = input.int(50, "長期EMA")
aLen = input.int(14, "ADX期間")
th = input.int(25, "ADXしきい値")
e1 = ta.ema(close, fLen)
e2 = ta.ema(close, sLen)
[pdi, mdi, adx] = ta.dmi(aLen, aLen)
gc = ta.crossover(e1, e2)
plot(e1, "EMA短期", color = color.orange)
plot(e2, "EMA長期", color = color.teal)
plotshape(gc and adx > th, "シグナル", shape.triangleup, location.belowbar, color.green)
plotshape(gc and adx <= th, "見送り", shape.xcross, location.belowbar, color.gray)
var bool inPos = false
if gc and adx > th
inPos := true
else if e1 < e2
inPos := false
bgcolor(inPos ? color.new(color.green, 88) : na, title = "保有中")

