「雲の上でMACDが上向いたら、もう買いですよね?」
- MACDのゴールデンクロス188回のうち106回(56%)は雲の上。MACD単独で売買すると、その106回は勝率27%・平均−0.08%で、雲の下(勝率44%・平均+0.90%)より悪かった
- 雲の上のクロスだけ買う主ルールは年率−0.8%・PF0.93。MACD単独(3.0%・1.26)、#013三役好転(4.0%・1.85)を下回った
- 雲が外したのは負けの36%に対し、勝ちの56%。良くなったのは最大下落率(−31.9%)だけだった
雲が「環境」、MACDが「きっかけ」
一目均衡表の雲は、先行スパンAとBに挟まれた帯です。#013と同じく26日先にずらして描くので、今日の雲は26営業日前までの値動きで決まっています(先読みなし)。終値が雲の上なら上昇の環境とみなします。MACD(#003)は12日と26日のEMAの差で、その9日EMA(シグナル)を上抜けることをゴールデンクロス(GC)と呼びます。
(先行スパンA・Bの両方)
かつ MACD(12,26,9)が
シグナルを上抜け
売り:MACDがシグナルを下抜け
または 終値 < 雲の下限
「雲の上で出たGCは、トレンドに沿っているから信頼できる」とは限りません。雲の上にいる時点で、上昇はすでに続いています。そこからのGCは小さな押し目の終わりで、残りの上げ幅が小さいことが多いのです。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日のGCは23回、うち17回が雲の上でした。2025年4月16日のGC(33,920円)は雲の下限37,865円より下だったので主ルールは見送りましたが、MACD単独なら+9.35%の取引でした。2026年9月24日のGC(65,514円)も雲の下限65,592円をわずかに下回って見送り。10月2日は終値68,309円で雲の上限66,640円を上回っていますが、主ルールは現金のままです。
検証:組み合わせと単独の比較
ルール:上の式のとおり。感度は雲(9・26・52・ずらし26)とMACD(12・26・9)の整数パラメータをすべて同時に×0.8・×1.2にした2通り。単独の2本も同じ方法で感度を取りました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | PF | 勝率 | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| 雲×MACD(主ルール) | −0.8% | −31.9% | 106 | 0.93 | 26% | 20% |
| MACD単独(#003) | 3.0% | −35.4% | 188 | 1.26 | 36% | 51% |
| 三役好転→逆転(#013) | 4.0% | −34.8% | 44 | 1.85 | 34% | 62% |
| (参考)終値が雲の上の間保有 | 1.1% | −46.4% | 137 | 1.21 | 20% | 56% |
| (参考)雲の上以外のGCで買い→デッドクロスで売り | 3.7% | −30.6% | 81 | 1.55 | 46% | 31% |
組み合わせは保有率20%まで絞ったぶん、リーマン・ショックを含む2007年7月〜2009年3月の損失は−5.91%(買い持ち−55.31%、MACD単独−21.24%)で済みました。しかし平均保有8.8日、1回平均−0.09%。コストをゼロにしても年率0.27%(PF1.10)です。売り106回のうち99回はデッドクロスだけで決まり、雲割れが先に来たのは1回でした。売りの雲条件は、ほとんど出番がありません。
検証②:GCを雲の位置で分ける
2つの指標がそろって初めてできる分析です。MACD単独ルールの各取引を、GCの日に終値が雲のどこにあったかで分けました。
| GCの日の位置 | 回数 | 勝率 | 1回平均 | 10日後 | 20日後 |
|---|---|---|---|---|---|
| 雲の上(主ルールが買う) | 106 | 27% | −0.08% | +0.03% | +0.50% |
| 雲の中 | 17 | 53% | +1.27% | +1.61% | +1.73% |
| 雲の下 | 65 | 44% | +0.90% | +0.63% | +1.11% |
| すべての日 | — | — | — | +0.38% | +0.75% |
雲の下の65回のうち1回(2026年9月24日)は未決済で、勝率は64回で計算しています。MACD単独の負け121回のうち、雲が外したのは44回(36%)。一方、勝ち66回のうち37回(56%)も外し、その合計は+79.54%でした。残した雲の上の106回は、合計−8.13%です。
GCに限らず日単位で見ても同じ傾向です。10日後の平均リターンは、MACDがシグナルより上の日で雲の上+0.27%・雲の下+0.62%、下の日で雲の上+0.22%・雲の下+0.72%。19年の日経平均では、雲の下にいる日のほうがその後よく上がりました。#011 平均足で見た「数日単位では下げたあと戻しやすい」性質と同じ向きです。
読み解き
- 雲の上のGCは遅いきっかけだった。上昇が続いた後の小さな押し目の終わりで、10日後の平均は+0.03%と全日平均+0.38%を下回った。
- 雲はダマシより当たりを多く外した。負けの36%を除くかわりに勝ちの56%を除き、PFは1.26から0.93に下がった。MACDの稼ぎは、下落後の雲の下・雲の中のGCに集まっていた。
- 環境フィルターの効果は下落の浅さだけ。最大下落率は−35.4%から−31.9%へ改善したが、保有率20%で出番を減らした結果にすぎない。
成績のまとめ(雲の上のGCで買い・デッドクロスか雲割れで売り)
PFが0.93と1を割り、パラメータ×0.8では年率−0.70%。期間別では前半がマイナス、後半がプラスだった。雲で絞るとMACD単独の年率3.0%を失い、#013三役好転にも届かない。結果を見た後で向きを逆にした「雲の上以外のGC」は年率3.7%・PF1.55(取引81回)だが、参考扱いとする。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("雲×MACD(応用編A03)", overlay = true)
mid(len) => math.avg(ta.highest(high, len), ta.lowest(low, len))
ten = mid(9)
kij = mid(26)
// 今日の雲=26日前に計算した先行スパン(本文と同じ。標準の一目表示とは1日ずれることがある)
spanA = math.avg(ten, kij)[26]
spanB = mid(52)[26]
top = math.max(spanA, spanB)
bot = math.min(spanA, spanB)
[m, s, _] = ta.macd(close, 12, 26, 9)
gc = ta.crossover(m, s)
dc = ta.crossunder(m, s)
var bool inPos = false
if not inPos and gc and close > top
inPos := true
else if inPos and (dc or close < bot)
inPos := false
p1 = plot(spanA, "先行スパンA", color = color.teal)
p2 = plot(spanB, "先行スパンB", color = color.orange)
fill(p1, p2, color = color.new(color.gray, 85))
plotshape(gc and close > top, "雲の上のGC", shape.triangleup, location.belowbar, color.blue, size = size.tiny)
plotshape(gc and close <= top, "雲の上以外のGC", shape.circle, location.belowbar, color.gray, size = size.tiny)
bgcolor(inPos ? color.new(color.blue, 90) : na, title = "保有中")

