VWAP(アンカード):出来高で重みをつけた平均コストと比べる
- 年初起点のVWAPは、その年に売買された出来高の平均単価。2025年4月7日は終値が16%下にあり、年初からの出来高はすべて含み損だった
- 終値が年初VWAPの上の間だけ持つと、年率1.5%・PF1.18。最大下落率は−46.4%と買い持ち(−61.0%)より小さいが、PFは1.18にとどまる
- 出来高で重みづけしない「年初からの単純平均」でも、保有・現金の判断は97.2%の日で同じ。日足では出来高の効果はわずか
VWAPは「市場全体の平均取得単価」
VWAP(出来高加重平均価格)は、価格をその日の出来高で重みづけして平均したものです。たくさん売買された価格ほど重みが大きくなるので、「その期間に売買した人たちが、平均いくらで買ったか」の目安になります。本来は1日の中の約定データから計算しますが、日足しかない場合は、その日の代表価格として典型価格(高値・安値・終値の平均)を使うのが一般的です。
アンカード(anchored)は「錨を下ろした」という意味です。計算を始める日(起点)を決め、そこから毎日、典型価格×出来高と出来高を積み上げて割ります。日がたつほど分母が大きくなるので、ラインは少しずつ動きにくくなります。
VWAP = Σ(典型価格 × 出来高)÷ Σ 出来高
(Σは起点から今日までの合計)
「平均より上」は、どれだけの人が含み益かを表す
終値がVWAPより上なら、起点以降に売買された出来高の平均単価より高い、つまり平均的な買い手は含み益です。ETF1321で、年初から売買された出来高のうち、その日の終値より安い典型価格で取引された割合(含み益の出来高)を計算しました。2020年3月19日(終値17,080円、年初VWAPより19.30%下)、2024年8月5日(同17.04%下)、2025年4月7日(終値32,650円、同15.98%下)は、いずれも0%。年初から買った出来高がすべて含み損でした。2026年10月2日は終値71,040円が年初VWAP 63,503円を11.87%上回り、含み益の出来高は85%です。
年末時点で終値が年初VWAPより下だったのは、2007〜2025年の19年のうち2007年・2008年・2011年・2018年・2022年の5年。乖離がもっとも大きかったのは2008年の−23.34%と、2020年の+26.74%でした。
「年初VWAPは1年を通して有効なライン」とは限りません。年初直後は数日分の出来高しか積み上がっておらず、VWAPはほぼその日の価格と同じです。実際、年初から1〜5営業日目は終値とVWAPの上下が31.0%の日で入れ替わりました。6〜20営業日目は14.0%、61営業日目以降は5.4%まで落ち着きます。ラインとして意味を持つのは、出来高がある程度たまってからです。
実際の日経平均で見てみる
2025年は、年初(1月6日)の終値40,830円とほぼ同じ水準からVWAPが始まりました。1〜2月は終値がVWAPの上下を何度も行き来し、4月7日には終値32,650円がVWAP 38,860円を大きく割り込みます。VWAPがその年の最安値38,136円をつけた5月1日に終値が再び上抜け、年末まで上にとどまりました。年末の乖離は+22.43%です。
2026年も同じ形です。1月5日の終値53,890円から始まったVWAPのまわりで、1〜3月に上下の入れ替わりが続きました。3月31日は終値53,480円がVWAP 56,487円の下。4月8日に上抜けてからは上にとどまり、6月30日は終値73,510円に対しVWAPは61,605円でした。直近500営業日で上下の入れ替わりは31回、20日線の55回より少なく、上にいた日は80%です。
オレンジの20日安値起点VWAPは、起点が平均10.8日前と近いので、ほぼ価格に張り付いて動きます。10月2日の値は68,289円(起点は9月14日)でした。
検証:年初VWAPの上で保有
ルール:ETF1321の終値が年初起点VWAPより上なら保有、下なら現金。起点のリセット間隔を半年・10か月・14か月・2年に変えた版、20日安値の日を起点にした版、出来高を使わない「年初からの典型価格の単純平均」、20日線・200日線とも比べました。売買も買い持ちもETF1321の終値で計算し、そのほかの条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略(ETF1321) | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち(ETF) | 4.03倍 | 7.4% | −61.0% | — | — | — | 100% |
| 終値>年初VWAP | 1.34倍 | 1.5% | −46.4% | 165 | 15% | 1.18 | 63% |
| 終値>10か月ごと起点VWAP | 1.43倍 | 1.9% | −40.2% | 172 | 19% | 1.25 | 62% |
| 終値>14か月ごと起点VWAP | 1.91倍 | 3.4% | −35.1% | 153 | 16% | 1.36 | 63% |
| 終値>半年ごと起点VWAP | 1.61倍 | 2.5% | −41.0% | 219 | 20% | 1.26 | 60% |
| 終値>2年ごと起点VWAP | 1.79倍 | 3.0% | −43.6% | 112 | 11% | 1.48 | 62% |
| 終値>年初からの単純平均 | 1.31倍 | 1.4% | −41.4% | 178 | 13% | 1.15 | 61% |
| 終値>20日安値起点VWAP | 0.83倍 | −1.0% | −73.7% | 468 | 29% | 1.02 | 76% |
| 終値>20日線 | 1.13倍 | 0.6% | −52.5% | 281 | 27% | 1.09 | 58% |
| 終値>200日線 | 2.42倍 | 4.6% | −30.6% | 93 | 14% | 1.46 | 62% |
| 年初VWAPかつ200日線の上 | 1.65倍 | 2.6% | −36.5% | 134 | 15% | 1.31 | 54% |
年初VWAPの上で持つ方法は、2008年に保有率29%で−19.44%(コスト前)と、買い持ちの−41.54%の半分以下に損失を抑えました。一方で2022年は−20.32%と、買い持ちの−9.30%より悪化しています。上下を行き来する年は、売るたびに下で売り、買うたびに上で買い直すことになるためです。2026年も保有率86%ながら+11.46%で、買い持ちの+35.78%に大きく遅れました。最大下落率−46.4%は2015年6月から2023年1月まで、7年半かけて積み上がったものです。
年初の数日が売買を増やしている
330回の売買(買いと売りの合計)のうち72回が、年初から20営業日以内に集中していました。取引が始まった月も1月が32回と、どの月より多くなっています。ただ、年初5営業日は判断せず前年末の状態を持ち越す版にしても、年率1.55%・PF1.19とほとんど変わらず、最大下落率は−51.0%に悪化しました。コストをゼロにしても年率3.27%・PF1.35で、弱さの原因は売買の多さよりも、ラインそのものの遅さと粗さにあります。
出来高の重みはほとんど有効でない
年初VWAPと「年初からの典型価格の単純平均」の差は、平均すると0.80%しかありません。差がもっとも開いたのは、出来高が急増したコロナ・ショック直後の2020年3月24日で−8.48%。それでも保有・現金の判断が一致した日は97.2%で、成績も年率1.5%と1.4%の差でした。日経平均のETFのように毎日大量に売買される銘柄では、日足の出来高で重みづけしても、ラインはほぼ単純平均と同じになります。
20日安値起点はノイズを拾うだけ
直近20日の安値の日を起点にすると、9.7%の日は「今日が起点」で、VWAPはその日の典型価格そのものになります。終値が上にある日は76.5%で、平均7.8日の保有で売り買いを繰り返し、468回の取引で年率−1.0%。最大下落率−73.7%は買い持ちより大きく、起点を16日・24日にしても年率はマイナスでした。
読み解き
- 年初VWAPは「今年の買い手の損益」を測る物差しとしては分かりやすい。2025年4月7日は含み益の出来高0%、2026年10月2日は85%。相場の過熱や悲観の度合いを、数字で確認できる。
- 売買ルールとしては、20日線より良く、200日線より悪い。年率1.5%・PF1.18は、20日線(0.6%、#009 OBVの比較と同じ値)を上回るが、200日線の4.6%・PF1.46に届かない。年初に価格へ飛びついてリセットされる仕組みが、年初の判断を不安定にしている。
- 出来高を使う意味は、日足ではほぼない。単純平均との判断一致は97.2%。リセット間隔を14か月にすると年率3.4%、10か月で1.9%と、出来高より「いつ起点を置くか」で結果が大きく変わった。
成績のまとめ(終値が年初VWAPの上で保有)
取引165回、最大下落率−46.4%(買い持ち−61.0%)、後半(2016年10月〜)の年率4.4%は前半−1.4%から改善し、起点の間隔を10か月・14か月に変えてもプラスだった。一方でPFは1.18にとどまる。また年率1.5%は買い持ち(ETF)の7.4%に遠く、同じ条件の200日線(年率4.6%)にも劣る。感度の2通りがどちらも12か月より良いことは、年初という区切りがたまたま不利だった可能性を示しており、起点の置き方に結果が強く依存している。20日安値起点は年率−1.0%で使えない。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("アンカードVWAP(年初・20日安値)", overlay = true)
// 年初起点:年が替わった最初の足から積み上げ直す
yearVwap = ta.vwap(hlc3, timeframe.change("12M"))
// 20日安値起点(簡略版):新しい20日安値をつけた日に起点を更新
newLow = low == ta.lowest(low, 20)
lowVwap = ta.vwap(hlc3, newLow)
plot(yearVwap, "年初VWAP", color = color.blue, linewidth = 2)
plot(lowVwap, "20日安値VWAP", color = color.orange)
plot(ta.sma(close, 200), "200日線", color = color.teal)
bgcolor(close > yearVwap ? color.new(color.green, 90) : color.new(color.red, 90), title = "年初VWAPの上下")

