包み足:前日を包み込む足で反転を捉える
- 教科書どおりの陽の包み足は19年半で113回、下降局面に限ると50回しか出ない
- 下降局面の陽の包み足は、10日後の平均が+1.37%(下降局面の日すべては+0.46%)。始値の条件を外すと+0.30%まで薄まる
- 「下降局面の陽の包み足で買い10日保有」は年率2.8%・PF2.07・最大下落率−17.1%。取引は19年で45回と少ない
包み足は「前日の実体を丸ごと包む」2本
包み足(つつみあし)は、2本のローソク足の組み合わせです。前日の実体(始値と終値の間の太い部分)を、今日の反対色の実体が上下とも包み込みます。英語ではEngulfing(エンガルフィング)と呼ばれ、陽の包み足は「抱き線」とも言います。
陽の包み足は、前日が陰線、今日が陽線で、今日の始値が前日の終値以下、今日の終値が前日の始値以上の形です。売りが続いたあと、今日は前日よりさらに安く始まったのに、引けでは前日の始値まで買い戻された、という値動きを表します。陰の包み足はその逆で、天井のサインとされます。
かつ 今日の始値 ≦ 前日の終値、今日の終値 ≧ 前日の始値
下降局面:前日の終値 < 前日の20日移動平均
始値の条件が有効になってくる
#017の酒田五法では、始値が前日の実体の中に入った日が全営業日の25.6%しかなく、教科書どおりの三兵がほとんど出ないことがわかりました。日経平均は前夜の米国市場の動きを受けて寄り付くため、窓を開けることが多いのです。
包み足の場合、陽の包み足が求めるのは「前日の終値以下で寄り付く」ことです。前日が陰線だった2,403日のうち、そう寄り付いたのは1,120日(46.6%)。ここまでは珍しくありません。難しいのは、その日のうちに前日の始値まで買い戻されることです。陽の包み足の日は、始値が前日終値より平均0.33%低く始まり、終値は始値から平均+1.18%上げていました。日中に流れがはっきり変わった日だけが残ります。
「大きな陽線が出たら包み足」ではありません。2025年4月8日は終値33,012円と大きく戻しましたが、始値31,729円は前日終値31,136円より上で、終値も前日始値33,155円に届かず、包み足にはなりません。また、陽の包み足の前日の実体は中央値0.23%と、陰線の日全体(0.47%)の半分でした。包まれる側が小さいと、形は簡単にそろいます。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日のうち、下降局面(前日終値が20日線より下)で出た陽の包み足は2回です。2024年10月28日は、始値37,758円が前日終値37,914円を下回り、終値38,605円で前日始値37,955円を上回りました。10日後は+2.00%。11月28日(終値38,349円)も10日後は+3.91%でした。
陰の包み足の印象的な例は2025年3月24日です。前日の陽線を包む陰線で終値37,608円。20日線の上で出た「天井のサイン」で、10日後は4月の急落を挟んで−17.21%でした。一方、2026年6月22日に陽の包み足(終値72,354円)が出た翌日、6月23日にはその陽線を陰の包み足(終値69,788円)が包み返しています。2本だけで方向を決めるのが難しいことがよくわかる並びです。
検証①:包み足の後、何日後まで差が出るか
パターンが出た日の終値から、1・5・10・20営業日後の騰落率を平均しました。比較の基準は「すべての日」と、包み足と同じ条件の「下降局面の日」「上昇局面の日」です。
| その日の終値から | 回数 | 1日後 | 5日後 | 10日後 | 20日後 | 20日後の上昇率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| すべての日 | 4,759 | +0.04% | +0.19% | +0.38% | +0.75% | 58.0% |
| 下降局面の日 | 1,999 | +0.04% | +0.25% | +0.46% | +0.98% | 60.9% |
| 陽の包み足(すべて) | 113 | −0.01% | +0.64% | +0.87% | +0.82% | 57.5% |
| 陽の包み足(下降局面) | 50 | −0.01% | +1.21% | +1.37% | +1.29% | 68.0% |
| 陽の包み足(上昇局面) | 63 | −0.01% | +0.18% | +0.47% | +0.45% | 49.2% |
| 陰の包み足(上昇局面) | 70 | +0.16% | +0.20% | +0.12% | −0.21% | 54.3% |
| 陰の包み足(下降局面) | 38 | +0.51% | +0.82% | +0.57% | +2.32% | 68.4% |
| ゆるい陽(下降局面) | 348 | −0.04% | +0.13% | +0.30% | +0.57% | 59.2% |
翌日はどれも全日平均と変わりません。差が出るのは5〜10日後です。下降局面の陽の包み足は5日後+1.21%、10日後+1.37%で、同じ下降局面の日すべて(+0.25%、+0.46%)を大きく上回りました。ただ、20日後は+1.29%と10日後からほとんど伸びず、下降局面の日すべての+0.98%との差は縮みます。効果があるとしても、2週間ほどの短い反発です。
酒田五法とは逆の結果です。三兵では始値の条件が件数を減らすだけでしたが、包み足では「下に寄り付いてから買い戻された」という始値の情報こそが有効に働いていました。始値を問わないゆるい版(348回)の10日後は+0.30%で、下降局面の日すべてより低くなります。上に寄り付いて上げた陽線は、むしろ短期の上がりすぎに近いのでしょう。
陰の包み足は、天井のサインとしては弱い結果です。上昇局面で出ても20日後−0.21%と、全日平均+0.75%を下回る程度。下降局面の陰の包み足は、20日後+2.32%とむしろよく上がっていました(38回なので偶然の幅は大きい)。
検証②:下降局面の陽の包み足で買い、10日保有
ルール:前日の終値が20日線より下のときに陽の包み足が出たら、その日の終値で買い、10営業日後の終値で売る。保有中に次の包み足が出たら、そこから10日に延長します。比較として、局面を問わない版と、始値の条件を外したゆるい版も試しました。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| 陽の包み足(下降局面)→10日 | 1.72倍 | 2.8% | −17.1% | 45 | 60% | 2.07 | 10% |
| 陽の包み足(下降局面)→8日 | 1.61倍 | 2.5% | −15.9% | 47 | 55% | 1.98 | 8% |
| 陽の包み足(下降局面)→12日 | 1.85倍 | 3.2% | −13.5% | 45 | 64% | 2.34 | 12% |
| 陽の包み足(すべて)→10日 | 1.90倍 | 3.4% | −27.1% | 82 | 55% | 1.65 | 21% |
| ゆるい陽(下降局面)→10日 | 1.41倍 | 1.8% | −61.0% | 146 | 56% | 1.18 | 52% |
| 陰の包み足(下降局面)→10日 | 0.99倍 | 0.0% | −40.0% | 35 | 69% | 1.12 | 8% |
主ルールは1回あたり平均+1.31%、平均10.8日の保有で、最終資産は1.72倍でした。最大の勝ちはリーマン・ショック後の2008年10月28日に買った+13.89%、最大の負けは−7.60%です。保有日数を8日・12日に変えても年率は2.5%・3.2%とプラスで、PFも1.98・2.34と高いままでした。
一方、ゆるい版は取引146回と回数は足りるものの、PF1.18、最大下落率−61.0%。下げ相場で何度も「反発の陽線」に飛びつき、そのたびに下げ続ける動きに巻き込まれます。同じ下降局面の陽線でも、包み足の条件を満たすかどうかで成績がまるで違いました。
回数が少なすぎる
弱点ははっきりしています。下降局面の陽の包み足は年に0〜6回で、2009年・2011年・2020年・2025年は1回も出ていません。コロナ・ショック(2020年3月)の底でも出ませんでした。50回のシグナルは、保有中の延長でまとまり、取引としては45回になります。5日後の平均+1.21%も標準誤差±0.64%と幅が大きく、「全日平均と同じ」可能性を完全には否定できません。前半(〜2016年9月、26回)の10日後平均は+1.61%、後半(24回)は+1.11%と、後半にやや弱まっている点も気になります。
読み解き
- 下降局面の陽の包み足には、短期の反発の傾向があった。10日後+1.37%は下降局面の日すべての+0.46%の約3倍。ただし20日後には差が縮み、効果は2週間程度。
- 有効だったのは始値の条件。下に寄り付いてから前日始値まで買い戻された日だけが反発につながり、始値を問わないゆるい版は10日後+0.30%と、むしろ平均以下だった。#017の三兵では始値の条件が件数を削るだけだったのと対照的。
- 陰の包み足は天井のサインとして弱い。上昇局面でも20日後−0.21%にとどまり、2025年3月24日のような大きな下げの前触れは例外的。売りのサインとしては使いにくい。
成績のまとめ(下降局面の陽の包み足→10日保有)
取引は45回と少ない。PF2.07、最大下落率−17.1%は優秀で、保有日数を変えても年率はプラスを保った。ただし年率2.8%は買い持ち7.3%の4割以下で、保有率10%の「たまに出る反発狙い」にとどまる。「4日連続下落で買い→5日保有」のルール(年率5.3%、PF2.01、取引114回)と比べると、似た性格で回数が半分以下。後半に効果がやや弱まっている点も含め、単独の売買ルールとしては物足りない。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("包み足(下降局面の陽の包み足)", overlay = true)
holdN = input.int(10, "保有日数")
bullEng = close[1] < open[1] and close > open and open <= close[1] and close >= open[1]
bearEng = close[1] > open[1] and close < open and open >= close[1] and close <= open[1]
downTrend = close[1] < ta.sma(close, 20)[1] // 前日の終値が前日の20日線より下
entry = bullEng and downTrend
// 買いからholdN本のあいだ背景を塗る(重複は延長)
var int left = 0
left := entry ? holdN : math.max(left - 1, 0)
bgcolor(left > 0 ? color.new(color.blue, 88) : na, title = "保有中")
plot(ta.sma(close, 20), "20日線", color = color.orange)
plotshape(entry, "陽の包み足(下降局面)", shape.triangleup, location.belowbar, color.green, size = size.small)
plotshape(bullEng and not downTrend, "陽の包み足(その他)", shape.triangleup, location.belowbar, color.new(color.green, 60), size = size.tiny)
plotshape(bearEng, "陰の包み足", shape.triangledown, location.abovebar, color.red, size = size.tiny)

