特集 · 100本の検証から
暴落のとき、テクニカル指標は守ってくれた?
2026年10月4日読了 約10分集計
ぜ
ぜにぴよ年率で買い持ちに勝てないなら、指標を使う意味って「暴落から逃げられる」ことですよね? 本当に逃げられたんですか?
所
所長いい問いだ。100本の主ルールを、過去8回の暴落に当ててみよう。逃げられたかだけでなく、底のあとに戻ってこられたかも見る。暴落の期間と数え方は、結果を見る前に決めておいた。
集計の範囲この特集は、ラボで検証した約100本の指標の主ルールをまとめて集計したものです。サイトの記事として紹介しているのは、そのうち厳選した41本。名前だけが出てくる指標は、記事にしていない検証分です。
この記事でわかること
- 96本×8回=768の組み合わせのうち66%で、下落の半分以上を避けていた
- ただし底の日に現金だったのは77%。そのときの戻りの取り分は中央値0%
- よく避けたルールほど戻りを取れない(順位相関−0.72)。両方そろったルールは0本
数え方:窓・山・底を先に決める
暴落は8回。2008年リーマン・ショック(2008年9月1日〜2009年3月10日)、2011年3月の震災、2015年8〜9月の中国発の急落、2016年1〜6月(年初の下落と英国のEU離脱)、2018年10〜12月、2020年2〜3月のコロナ・ショック、2024年7月11日〜8月5日、2025年3〜4月の関税ショックです。この暦日の窓の中で、日経平均の終値が最も安い日を底、窓の初日から底までで最も高い日を山とします。
山から底で「どれだけ避けたか」、底から60日で「どれだけ戻れたか」を測る
1回の暴落の区切り方(形は説明用)
回避率 100% = 下落を全部避けた 0% = 買い持ちと同じ
守った = 回避率 50%以上
底で現金 = 底の日の終値時点でシグナルが現金
対象は100本のうち96本。日経VI(#020)は2021年9月からしか評価できず、相対力は現金にならない乗り換え戦略、フィボナッチ(#010)は保有系列が記事の取引と一致せず、ランダム売買は比較用なので外しました。コストは片道0.1%、出来高系の12本はETF1321で売買し、同じETFの買い持ちと比べます。
誤解「暴落で現金だった=指標が危険を察知した」とは限りません。96本の保有率は全期間の平均で43%。半分以上の日は、暴落と関係なく現金です。
8回の暴落と、ルールの成績
| 暴落 | 山 → 底 | 買い持ち | 守った | 底で現金 | 底+60日 買い持ち | 取り分 中央値 |
| 2008 リーマン | 2008/9/1 → 2009/3/10 | −45.0% | 60本 | 77本 | +38.7% | 39% |
| 2011 震災 | 2011/3/1 → 3/15 | −20.0% | 67本 | 73本 | +11.0% | 0% |
| 2015 中国 | 2015/8/10 → 9/29 | −18.6% | 61本 | 73本 | +11.5% | 24% |
| 2016 年初〜英離脱 | 2016/1/4 → 6/24 | −19.0% | 48本 | 76本 | +12.4% | 0% |
| 2018 年末 | 2018/10/2 → 12/25 | −21.1% | 62本 | 74本 | +9.8% | 1% |
| 2020 コロナ | 2020/2/6 → 3/19 | −30.7% | 70本 | 76本 | +35.1% | 28% |
| 2024 夏 | 2024/7/11 → 8/5 | −25.5% | 68本 | 69本 | +21.0% | 0% |
| 2025 関税 | 2025/3/26 → 4/7 | −18.1% | 74本 | 72本 | +27.8% | 32% |
守ったのは毎回48〜74本。一方で底の日に現金だったルールも69〜77本あり、底から60日の取り分は中央値で0〜39%にとどまりました。2011年は底で現金だったルールの取り分が中央値−17%、保有していたルールは117%と、明暗が分かれています。
底の日は72〜80%が現金。ただ、その水準の日はふだんもある
上:日経平均(円、対数目盛、▼山 ▲底)、下:その日に現金だったルールの割合(%、20日平均)
終値現金のルールの割合(20日平均)
データ:TradingView(TVC:NI225、TSE:1321)2007年4月13日〜2026年10月2日
現金の割合(日次)は全期間の平均で57%、8回の底の日は72〜80%でした。ただし72%以上の日は全期間の16%あり、最大は2021年7月16日の85%です。底の日だけが特別に高いわけではありません。山の日はばらつき、2018年は34%、2024年は33%しか現金ではありません。上昇の途中で始まった急落には、多くのルールが乗ったまま下落を浴びました。
ヒートマップ:ルール×暴落
ローソク足・ボラティリティ系は緑が並ぶ。オシレーター系は色が薄い
各セル=回避率。系統ごとに平均回避率の高い順。●は底の日に現金
| 系統 | 本数 | 回避率 中央値 | 守った割合 | 底で現金 | 取り分 中央値 |
| ローソク足・パターン系 | 10 | 95% | 79% | 89% | 0% |
| ボラティリティ系 | 11 | 80% | 75% | 74% | 8% |
| トレンド系 | 25 | 75% | 72% | 94% | 13% |
| 出来高系 | 12 | 73% | 71% | 84% | 24% |
| 価格帯・ライン系 | 9 | 66% | 60% | 60% | 19% |
| オシレーター系 | 25 | 59% | 56% | 62% | 39% |
| 日本の指標・その他 | 4 | 47% | 41% | 56% | 41% |
| 全体 | 96 | 72% | 66% | 77% | 19% |
8回すべてで守ったのは14本。上位は包み足(#033)、ギャン・アングル、スクイーズ(#015)などで、どれも底で現金でした。トレンド系は94%のセルで底の日に現金です。下げてから売るので底ではほぼ外にいて、戻りの初動も逃します。
逆に逆張りのRSI(#002、30で買い→70で売り)は守ったのが1回だけでしたが、戻りの取り分は平均94%で96本中1位でした。
避けるほど、戻りを逃す
右へ行くほど下へ。避ける力と戻る力は両立しない
1点=1本のルール。横:8回の平均回避率、縦:平均の取り分。点線=買い持ち、橙線=回帰直線
トレンド系オシレーター系ボラティリティ系その他の系統
平均回避率と平均取り分の順位相関は−0.72。回避率で3等分すると、上位32本は回避率84%・取り分8%、下位32本は43%・50%です。回避率50%以上かつ取り分100%以上のルールは1本もありません。底で現金だった590セルの取り分は中央値0%、保有していた178セルは77%でした。
逃げ上手の包み足と戻り上手のRSI。どちらも年率は買い持ちに届かない
開始時を1とした資産の推移(対数目盛)、月末値、コスト控除後
買い持ち包み足(#033)RSI(#002)
包み足は8回の平均回避率114%(下落中に利益が出た回もある)で、最大下落率は−17.1%。ただし全期間の保有率は10%で、年率は2.8%です。RSIは最大下落率−61.4%と買い持ちと同じでした。
参考:保有率の低さだけで説明できるか
結果を見たあとに加えた比較です。96本の保有率は全期間43%に対し、暴落の下落区間では33%、底から60日では42%でした。下落区間で保有率がふだんより低かったのは72本。「1−全期間の保有率」を当てずっぽうの回避率とみなすと、実際の回避率はそれを中央値で12ポイント上回り、66本がプラスでした。参考のランダム売買は平均回避率42%です。下げを見て降りる仕組みは、ある程度は働いています。
読み解き
- 暴落からはおおむね逃げられた。768セルの66%で下落の半分以上を回避。回避率は保有率から見込める水準を中央値で12ポイント上回った。
- 代わりに戻りを逃した。底で現金は77%で、その取り分は中央値0%。回避率と取り分の順位相関は−0.72で、両立したルールは0本。
- 守りは平時の機会損失で払っている。山から底+60日の通算では95本が買い持ちを上回ったが、全期間の年率で買い持ち7.3%を超えたルールは0本(最高は#001の6.5%)。
結論
集計ローソク足・ボラティリティ・トレンド系は暴落をよく避けたが、底では現金で戻りを取れない。逆張りのオシレーター系は下落を浴びるかわりに戻りを取る。「守ってくれたか」の答えは「多くは守ったが、その代わりに戻りと平時の上昇を手放した」。
ぜ
ぜにぴよ逃げるのが上手なほど、戻るのが下手なんですね。保険料みたいです。
所
所長うまいたとえだ。2025年は回避率の中央値が100%だったのに、底+60日まで含めると買い持ちを上回ったのは40本だけ。次の特集では、勝率の高い指標ほど儲かるのかを確かめよう。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("暴落の回避と戻りを見る(MACDの例)", overlay = false)
[m, s, _] = ta.macd(close, 12, 26, 9)
inPos = m > s // シグナルクロスで保有(#003の形)
peak = ta.highest(close, 120)
dd = (close / peak - 1) * 100 // 直近120日高値からの下落率(%)
plot(dd, "高値からの下落率", color = color.gray)
hline(-20, "−20%", color = color.red)
bgcolor(inPos ? color.new(color.green, 85) : color.new(color.red, 92), title = "保有/現金")