勝率が高い指標ほど、儲かるの? 96本で確かめる
この特集は、ラボで検証した約100本の指標の主ルールをまとめて集計したものです。サイトの記事として紹介しているのは、そのうち厳選した41本。名前だけが出てくる指標は、記事にしていない検証分です。
- 勝率と年率の順位相関は+0.20と弱い。勝率と損益比(平均利益÷平均損失)は−0.85で、ほぼ裏返しの関係
- 勝率50%未満の63本のうち47本は年率プラス。勝率76%の#021 窓は年率−3.40%だった
- 年率と強く結びつくのは「期待値×年間取引回数」で、順位相関は+0.93
数える前に決めたこと
対象はラボで検証した100本の主ルールのうち、2007年4月から日経平均(出来高系はETF1321)を「買いか現金か」で売買する96本です。ランダム売買(比較基準)、#010 フィボナッチ・リトレースメント(年率なし)、#020 日経VI(2021年からで取引4回)、相対力(RS)(日経平均とS&P500の乗り換えで現金にならない)の4本は条件がそろわないため除きました。損益は1回ごとの往復コスト0.2%を引いた値です。
損益比 = 平均利益 ÷ 平均損失
期待値 = 勝率×平均利益
− 負け率×平均損失
損益分岐勝率 = 平均損失
÷(平均利益+平均損失)
勝率と、年率・PF・損益比・取引回数・平均保有日数との関係はスピアマンの順位相関で測ります。値ではなく順位どうしの相関なので、極端な1本に引っ張られにくい物差しです。勝率60%以上を「高勝率」、40%以下を「低勝率」と呼び、取引30回以上に絞った場合も確かめます。
期待値は「面積」で考える
1回の取引で平均いくら増えるかが期待値です。横幅を勝ち負けの割合、高さを平均の利益と損失にすると、期待値は緑の面積から赤の面積を引いたものになります。
RSIは82.4%の確率で平均+8.12%を得ますが、残り17.6%で平均−18.59%を失います。期待値は+3.41%で、プラスを保つには勝率69.6%が必要でした。移動平均クロスは3回に2回負けても、勝つときの平均が+31.30%あるので期待値は+6.28%、必要な勝率は16.6%だけです。
「勝率が50%を超えれば負けない」は誤りです。必要な勝率は損益比で決まります。勝率76.2%の#021 窓(ギャップ)は平均利益1.60%に対し平均損失5.59%で、損益分岐勝率が77.7%。わずかに届かず期待値はマイナスでした。
散布図:勝率と年率、勝率と損益比
左の図に右上がりの傾向はほとんどありません。順位相関は+0.20です。右の図は勝率が上がるほど損益比が下がり、相関は−0.85でした。勝率を上げる工夫(早めの利食い、深い押し目だけを買うなど)は、1回の勝ちを小さくするか、負けを大きくする方向に働いています。
| 勝率と比べたもの | 96本 | 取引30回以上(82本) |
|---|---|---|
| 年率 | +0.20 | +0.15 |
| PF | +0.44 | +0.35 |
| 損益比 | −0.85 | −0.89 |
| 取引回数 | −0.43 | −0.45 |
| 平均保有日数 | +0.19 | +0.13 |
PFとは+0.44とやや強めですが、PFは「勝率×平均利益÷(負け率×平均損失)」なので、勝率を式の中に含んでいます。それでも損益比の低下に打ち消され、年率との結びつきは弱いままです。取引回数とは−0.43で、勝率の低いルールほど売買が多い傾向がありました。
高勝率グループと低勝率グループ
| グループ | 本数 | 勝率 | 年率 | PF | 損益比 | 取引 | 年率マイナス |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 高勝率(60%以上) | 22 | 70% | 2.5% | 1.73 | 0.77 | 45回 | 1本 |
| 中間 | 30 | 47% | 1.4% | 1.32 | 1.62 | 84回 | 5本 |
| 低勝率(40%以下) | 44 | 34% | 1.8% | 1.25 | 2.49 | 164回 | 12本 |
勝率・年率・PF・損益比・取引回数は各グループの中央値です。高勝率グループは年率もPFもやや上で、低勝率グループに負けているわけではありません。ただし中身が違います。高勝率の22本は逆張りのオシレーターやローソク足が中心で、勝率と年率がともに高い7本(季節性、UO、コポックなど)はどれも取引56回以下でした。取引100回に届くのはRCI、RSI(2)を含む少数です。
低勝率の44本は移動平均やモメンタムの順張りが中心で、取引回数の中央値は164回。売買のたびにコストを払うため年率マイナスが12本あります。年率の上位10本の勝率中央値は45%、下位10本は36%でした。
年率と結びつくもの
年率との順位相関は、勝率+0.20、損益比+0.21に対し、PFが+0.80、期待値が+0.79、「勝率−損益分岐勝率」(勝率の余裕)が+0.79でした。期待値に年間取引回数を掛けると+0.93まで上がります。1回の期待値が小さくても、回数を重ねれば年率になります。
勝率の高いルールは、必要な勝率も高い。点線と橙の線は並んで右上がりになります。期待値がマイナスの12本のうち、勝率50%を超えるのは窓と十字線(勝率53%、損益分岐55%)の2本だけでした。
代表の3本の資産推移も見てみます。#018 ADX・DMIは61勝172敗の勝率26.2%ですが、平均利益5.48%に対し平均損失1.48%で、233回の取引で年率3.07%を積み上げています。
RSIは14勝3敗ですが、最大の負けが−50.5%で、最大下落率は買い持ちと同じ−61.4%でした。移動平均クロスは5勝10敗でも最大の勝ちが+46.2%あり、最大下落率は−36.7%です。96本の中に、年率で買い持ちの7.30%を超えたものはありません。
読み解き
- 勝率は儲けの目安として弱い。年率との順位相関は+0.20、取引30回以上でも+0.15。勝率50%未満でも47本が年率プラスだった。
- 勝率と損益比はトレードオフ。相関は−0.85。勝率を上げるほど損益分岐勝率も上がり、余裕は広がらない。
- 見るべきは期待値と回数。期待値×年間取引回数と年率の順位相関は+0.93。高勝率でも大きな負けが1回あれば、RSIのように資産は半分になる。
結論
96本では、勝率の高さは年率をほとんど説明しなかった。高勝率グループの年率中央値2.5%は低勝率グループの1.8%よりやや高いが、取引回数が少なく、100回に届くものは少ない。指標を比べるときは勝率ではなく、損益比と合わせた期待値、その回数、最大の負けを見る必要がある。


