スーパートレンド:ATRの帯でトレンドの転換を示す
- 線は上昇中に「上がるだけ」。上昇中の60.4%の日は、前日の値に据え置かれていた
- ATR(10)×3の反転で売買すると、年率2.9%・最大下落率−29.6%・PF1.42。取引は94回だった
- 倍率で成績が大きく揺れる。×2.0で年率−1.0%、×4.0で6.6%と、なめらかに変わらない
ATRのバンドを「ラチェット」で動かす
スーパートレンドは、その日の高値と安値の中心(hl2)から、ATR(平均的な1日の値幅)の何倍か離れたところにバンドを引きます。ATRは#008で扱った指標です。
上限 = hl2 + 倍率 × ATR(10)
下限 = hl2 − 倍率 × ATR(10)
ここまではケルトナーチャネル(#030)に似ています。違いは次の一手です。上昇トレンド中は、下限バンドが前日より上がったときだけ更新し、下がりそうなときは前日の値に据え置きます。歯車が逆回りしない「ラチェット」のような動きです。終値がこの線を割ったら下降トレンドに切り替わり、今度は上限バンドが「下がるだけ」の線になります。
線の距離は「ATRの3倍」
日経平均のATR(10)は、終値の1.45%(中央値)です。3倍すると4.35%。終値と線の距離の中央値は、上昇中3.19%、下降中3.47%でした。つまり、普段の値動きの3日分ほど逆に動かないと反転しません。19年余りで反転は188回、トレンドは平均で上昇27.6日、下降22.7日続きました。5日以内に終わった短いトレンドは7.4%で、パラボリックSAR(#022)の反転409回よりずっと落ち着いています。
「緑に変わった日が買い場」とは限りません。上昇へ反転した日の20営業日後の平均リターンは+0.13%で、すべての日の平均+0.75%を下回りました。下降トレンド中の日は20日後に+1.08%と、むしろ上昇トレンド中の日(+0.48%)より上がっています。スーパートレンドの価値は、入口の正確さより「大きな下げを避ける出口」にあります。
実際の日経平均で見てみる
直近500営業日の反転は15回、上昇トレンドの日は65.6%でした。2025年は2月25日(38,238円)に下降へ反転し、4月7日の急落(終値31,136円)を現金で迎えています。買い直しは4月24日の35,039円。底値では買えませんが、売った値段より安く戻れました。2024年も7月18日(40,126円)に売り、8月5日(31,458円)の急落を避けて、8月16日に38,062円で買い直しています。
一方で、2026年9月11日に64,011円で売った後、10月1日に68,956円で買い直しました。売値より高く買い戻す「だまし」です。10月2日の終値68,309円に対し、線は64,633円(距離5.69%)で、上昇トレンドが続いています。
検証:ATR(10)×3の反転で売買
ルール:スーパートレンドが上昇へ反転した日の終値で買い、下降へ反転した日の終値で売る(ATR(10)×3、日足の高値・安値・終値で計算)。感度は倍率を2.4と3.6(±20%)に変えて確かめました。比較として、同じ条件で#001 50日×200日クロスと#025 ドンチャン(20日高値で買い・10日安値で売り)も計算しています。条件は共通の検証ルールのとおりです。
| 戦略 | 最終資産 | 年率 | 最大下落率 | 取引 | 勝率 | PF | 保有率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 買い持ち | 3.93倍 | 7.3% | −61.4% | — | — | — | 100% |
| スーパートレンド ATR(10)×3 | 1.76倍 | 2.9% | −29.6% | 94 | 39% | 1.42 | 55% |
| 倍率 ×2.4(−20%) | 1.49倍 | 2.1% | −40.0% | 127 | 42% | 1.24 | 59% |
| 倍率 ×3.6(+20%) | 1.91倍 | 3.4% | −33.9% | 71 | 42% | 1.58 | 54% |
| ×3+200日線の上だけ | 1.73倍 | 2.9% | −28.0% | 91 | 34% | 1.51 | 42% |
| #001 50日×200日クロス | 3.41倍 | 6.5% | −36.7% | 15 | 33% | 2.51 | 61% |
| #025 ドンチャン 20日/10日 | 2.10倍 | 3.9% | −27.4% | 85 | 47% | 1.66 | 44% |
平均27.9日持つ売買で、勝率は39%。負け57回のうち24回は−3%以内の小さな負けでした。+10%以上の勝ちは11回だけですが、その合計は+203.1%で、全取引の合計+83.9%を大きく上回ります。少数の大きな上昇で、多くの小さな負けを埋める、典型的なトレンドフォローの形です。2008年は−6.9%(買い持ち−42.1%)に抑えました。8月21日に12,752円で売り、11月4日に9,115円で買い直しています。
倍率で成績が揺れる
気になるのは倍率への反応です。×1.5で年率0.2%、×2.0で−1.0%、×2.4で2.1%、×3.0で2.9%、×3.6で3.4%、×4.0で6.6%、×5.0で4.7%。全体に「広いほど良い」傾向はありますが、×4.0だけが飛び抜けています。数回の大きなトレンドに乗れたかどうかで結果が変わるため、最良の倍率を選ぶのは危険です。期間は7〜10日で年率2.9〜3.0%と安定し、14日で1.3%、20日で1.0%と、長くするほど悪化しました。
読み解き
- 下げを避ける力は本物。最大下落率−29.6%は買い持ち−61.4%の半分以下。2008年、2024年8月、2025年4月の急落を現金で迎えた。
- ただし「決定版」ではない。年率2.9%は#001の6.5%に届かず、#025 ドンチャン(3.9%)、#022 SAR(3.9%)、#008 ATR逆指値(4.3%)も下回る。ラチェットは反転を減らしたが、だましの往復コストは残った。コストなしなら年率3.9%。
- 倍率依存が大きい。×2.0では年率−1.0%、×4.0では6.6%。±20%(2.1%・3.4%)ではプラスを保ったが、少し外すと結果が崩れる。
成績のまとめ(ATR(10)×3の反転で売買)
取引94回、PF1.42、最大下落率−29.6%、後半5.3%で、倍率±20%でもプラスを保った。ただし年率2.9%は買い持ち7.3%の4割ほどで、同じトレンド系の#001や#025にも及ばない。倍率×2.0で年率−1.0%となるなど設定への依存も大きく、「決定版」と呼べる結果ではない。
自分で試す(TradingView)
//@version=6
indicator("スーパートレンド ATR(10)×3", overlay = true)
factor = input.float(3.0, "倍率", step = 0.1)
len = input.int(10, "ATR期間")
[st, dir] = ta.supertrend(factor, len) // dir < 0 なら上昇トレンド
plot(dir < 0 ? st : na, "上昇中の線", color = color.green, style = plot.style_linebr)
plot(dir > 0 ? st : na, "下降中の線", color = color.red, style = plot.style_linebr)
buy = dir < 0 and dir[1] > 0
sell = dir > 0 and dir[1] < 0
plotshape(buy, "買い", shape.triangleup, location.belowbar, color.green, size = size.tiny)
plotshape(sell, "売り", shape.triangledown, location.abovebar, color.red, size = size.tiny)

